Jun 10, 2023 interview

原作者・田島列島が語る マンガでは表現しきれない 映画的な映像が良かった『水は海に向かって流れる』

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キャラクターには嘘をつかせたくない

池ノ辺 田島先生が、マンガを描くときに一番大切にしていることは何ですか。

田島 キャラクターの行動や気持ちに嘘をつかせないということですね。自分が思い描いているストーリーがこうだからといって、キャラクターに無理やりそこに沿うようには動かしたくない。もちろん、この方が物語としては受けるだろうとか、全く考えないわけではないんですが、それも一応考えた上で、それでもキャラクターにはあくまで自然な方向に、嘘のない形で動いていってほしい、そう思っています。

池ノ辺 今ちょっとわかったような気がしました。先生の言葉が心に響くのは、そこに嘘がないからなんですね。ちなみに、次回作の構想はすでにあるんですか。

田島 次はもう描いていて、今回の映画の公開前に「みちかとまり」というタイトルの1巻が出る予定です。

池ノ辺 次も映画化ですか。

田島 どうでしょう(笑)。これはちょっと不思議な世界のお話なので、映画化するにしても、どちらかというと実写よりアニメの感じかもしれません。

池ノ辺 それは楽しみですね。では私も引き続きお祭りに参加させていただきます。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 岡本英理

プロフィール
田島列島(たじまれっとう)

漫画家

2008年前期MANGA OPENにてさだやす圭賞を受賞。デビュー作「子供はわかってあげない」(上下巻)、第2作「水は海に向かって流れる」(全3巻)が各漫画賞に次々とランクインし話題を呼ぶ。「子供はわかってあげない」は2021年に実写映画化もされた。現在「モーニング・ツー」(講談社)にて「みちかとまり」を連載中(既刊1巻)。

作品情報
映画『水は海に向かって流れる』

高校への通学のため、叔父の家に居候することになった直達。だが最寄りの駅に迎えにきたのは不機嫌そうな顔をする見知らぬ大人の女性、榊さんだった。案内された家の住人は、親に黙って脱サラしたマンガ家(叔父)、女装の占い師、海外を放浪する大学教授、そしてどこか冷めていて笑わない26歳のOL榊さん‥‥と、いずれも曲者揃い。そこに高校1年生の直達を加えて、男女5人ひとつ屋根の下、奇妙なシェアハウス生活が始まった。共同生活を送るうち、日々を淡々と過ごす榊さんに淡い思いを抱き始める直達だったが、「恋愛はしない」と宣言する彼女と自分との間には思いも寄らぬ因縁が‥‥。

監督:前田哲

原作:田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社「少年マガジンKCDX」刊)

出演:広瀬すず、大西利空、高良健吾、戸塚純貴、當真あみ、勝村政信、北村有起哉、坂井真紀、生瀬勝久

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 ©田島列島/講談社

公開中

公式サイト happinet-phantom.com/mizuumi-movie/

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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