May 11, 2022 interview

白石和彌監督が語る 『死刑にいたる病』で描いた人間の奥底をのぞいても分からない闇 

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「これ以上ない人生」は映画のおかげ

池ノ辺 監督は、映画が好きで、人間が好きだから、映画監督を続けている感じですよね。

白石 それは本当にそうです。撮影現場には、スタッフにしろキャストにしろ、魅力的な人たちがあふれていて、そのなかで映画づくりをしていくのが本当に楽しくて今まで続いているのだと思います。まあ、たまたまということではないにしろ運よく監督になれて、しかもありがたいことに仕事として続けられているので、それができる。そこに本当に感謝しながら日々やっているというところですね。

池ノ辺 そんな監督にとって映画とはなんでしょう。

白石 趣味であり仕事ですね。仕事であり趣味だし。好きなものが仕事になっているので最高の人生をくれているものだとは思います。とは言っても、黒澤明監督はアカデミー賞授賞式で、「映画のことは、まだよくわかっていない」って言っていましたからね(笑)。僕なんかがわかった気になっちゃダメなんだろうなと。

池ノ辺 それは、みなさんよく言われます(笑)。

白石 でも、これ以上ない人生を歩めているのはやはり映画のおかげです。結局、自分は映画で社会を学ばせてもらって、映画で働かせてもらっているというのが現実です。もちろん映画とは何かと自分なりに考えることはありますが、それはそれとして、これからも本当に映画に身を捧げて、頑張って映画に恩返していきたい、それは強く感じているところです。

白石和彌監督が語る 『死刑にいたる病』で描いた人間の奥底をのぞいても分からない闇 

池ノ辺 私はこの映画を劇場で観てほしいし、特に若い人たちに観てほしいと思っていますが、そういう人たちに一言いただいていいですか。

白石 『死刑にいたる病』はミステリー要素も多く、スリラーな描写もあるんですけど、まずはミステリーとして岡田くん演じる筧井雅也が事件を調べていくその同じ目線で観ていただくだけで楽しめる映画です。そして観終わった後に、今度は犯人目線で物語を反芻したとき、さらに深い見方ができる、面白さが深まる映画です。そんな楽しみ方もできる映画だと思います。とはいえ、エンターテインメントのつもりでつくった映画ですから、単純に、こんな怖い映画ではあるけれど面白い映画もあるんだということを、つくった本人としては言っておきたいところです。

白石和彌監督が語る 『死刑にいたる病』で描いた人間の奥底をのぞいても分からない闇 

池ノ辺 いや本当に面白かったんですよ。人間の深層に入っていくような映画なのだけれど、それがエンターテインメントとなって、ハラハラドキドキしながら面白く見ることができる、素晴らしい作品でした(笑)。

インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵

プロフィール
白石 和彌(しらいし かずや)

監督

1974年12月17日生まれ、北海道出身。95年に中村幻児監督主催の映像塾に参加。以後、若松孝二監督に師事し、行定勲監督や犬童一心監督などの作品にフリーの演出部として携わる。長編監督デビューとなった『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(10)は第14回釜山国際映画祭ほか海外映画祭に正式出品され注目を集めると、長編2作目となるノンフィクションベストセラーを映画化した『凶悪』(13)で、新藤兼人賞2013金賞をはじめ、第37回日本アカデミー賞優秀作品賞・脚本賞ほか各映画賞を席巻し一躍脚光を浴びる。
16年には、現役警察官の有罪判決で世間を騒然とさせた稲葉事件をモチーフとした原作を映画化した『日本で一番悪い奴ら』やNetflixオリジナル作品『火花』、さらには日活ロマンポルノ45周年を記念し発足した「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」第3弾『牝猫たち』を監督。翌17年に公開された『彼女がその名を知らない鳥たち』はトロント国際映画祭に正式出品され、日本でも第39回ヨコハマ映画祭監督賞、第60回ブルーリボン賞監督賞を受賞。18年には代表作の一つとなった『孤狼の血』を始めとして『サニー/32』『止められるか、俺たちを』等で日本の映画賞を席巻。19年には『凪待ち』ほかで芸術選奨文部科学大臣新人賞映画部門を受賞するなど、日本映画界を牽引する映画監督のひとり。

【Filmography】※日本公開年
『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2010)
『凶悪』(2013)
『日本で一番悪い奴ら』(2016)
『牝猫たち』(2017)
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)
『サニー/32』(2018)
『孤狼の血』(2018)
『止められるか、俺たちを』(2018)
『麻雀放浪記2020』(2019)
『凪待ち』(2019)
『ひとよ』(2019)
『孤狼の血 LEVEL2』(2021)
『死刑にいたる病』(2022年)
『仮面ライダー BLACK SUN』(2022年春配信予定)

作品情報
白石和彌監督が語る 『死刑にいたる病』で描いた人間の奥底をのぞいても分からない闇 
映画『死刑にいたる病』

理想とは程遠いランクの大学に通い、鬱屈した日々を送る雅也(岡田健史)の元にある日届いた1通の手紙。それは世間を震撼させた稀代の連続殺人事件の犯人・榛村からのものだった。24件の殺人容疑で逮捕され、そのうちの9件の事件で立件・起訴、死刑判決を受けた榛村は、犯行を行っていた当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよくそこに通っていた。「罪は認めるが、最後の事件は冤罪だ。犯人は他にいることを証明してほしい」。榛村の願いを聞き入れ、雅也は事件を独自に調べ始める。そこには想像を超える残酷な事件の真相があった。

監督:監督:白石和彌

原作:櫛木理宇「死刑にいたる病」(ハヤカワ文庫刊)

出演:阿部サダヲ、岡田健史、岩田剛典、宮﨑優、鈴木卓爾、佐藤玲、赤ペン瀧川、大下ヒロト、吉澤健、音尾琢真、中山美穂

配給:クロックワークス

©2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会

公開中

公式サイト siy-movie.com

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」「ザ・メニュー」ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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