May 11, 2022 interview

白石和彌監督が語る 『死刑にいたる病』で描いた人間の奥底をのぞいても分からない闇 

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池ノ辺 それを見事に演じてくれたわけですね。そういう意味では他の役者さんもすごく個性があって、それぞれの役割をちゃんと掴んでそこにいる。そこからさらに、ストーリーがどんどん深まっていくという感じがしました。面会室のシーンも表現がすごいと思ったんですけど、どんな感じで撮影されたんですか。

白石 あそこはかなり手探りで進めていった撮影でした。あの被害者たちの顔写真が映り込むのは投影ですね。CGでもできるんですが、アナログ表現の方が面白いので、プロジェクターで投影しています。ですが後ろの壁に映したりするのは普通だなと思いながらやっていくうちに、面会室の間にあるガラス板に薄い紗を張って映画のスクリーンのようにして映したらどうかと思いついたのです。やってみたらCG合成では出しづらい質感もあって、これはワンシーンだけでも使えたらいいなと思っていました。

池ノ辺 ということは、役者がしゃべっている間に入ってくるように被害者の顔が映り込んだりっていうのも、撮影の時にその都度考えて撮っていったんですね。

白石 そうです、ライトに強弱をつけて、だんだん映り込みが見えてくるようにしたりとか、シーンごと、カットごとに全部アナログで基本的にはやっています。あとは撮りながらこうしようああしようと皆でやりとりしな決めていきました。それから美術の今村力さんが単純な四角四面の壁だけじゃなくて、カメラがスムーズに行き来できるように湾曲した面の壁も作ってくれたんです。ライティングを調整したら、それはちょっと面白い効果だなと思って使っています。

池ノ辺 そうやってさまざまなシーンに工夫が凝らされていたわけですが、私が気になったのが、冒頭の桜吹雪のシーンです。桜吹雪で、彼は何をしているんだろう? と思ってみていったら‥‥。あれは桜に見せようとしたんですよね?

白石 そうです。

池ノ辺 じゃあ、私は正しい見方をしてたんですね(笑)。で、それもオチがあって、大どんでん返しがあって、そういう一つ一つにどんどん引き込まれていって、そこが本当に面白かった。

白石 それはもう最高のお客さんですね(笑)。