表現に救われた恩を表現で返したい
池ノ辺 津田さんは、今は声優の他にも、監督とか役者とかさまざまに大活躍されていますけれど、これから何をやりたいと思っているんですか。
津田 映画をつくりたいというのはあります。元々この世界に興味を持ったきっかけが映画でしたから。
池ノ辺 津田さんがそれをやるにあたって、一番大切にしていることはなんですか。
津田 役者として演じる時、声優として演じる時、あるいは何か作品をつくっている時、いろんなことをやらせていただいているんですけど、このジャンルではできない表現みたいなものをどこかで求めているような気がします。こっちでもう役者として表現しているじゃないか、じゃあなんで映画つくるの?といったら、役者として表現しきれない部分というのがやっぱりあって、それは他のジャンルで表現するしかない、それが、映画をつくりたいという思いに繋がっているのではないかと思います。
自分は本当に小さい頃から表現というものに触れてきて、それは映画に限らず、アニメだったり絵だったり、小説だったり石だったり、とにかくいろんなものの表現がないと、人間は生きていけないんだなというのをつくづく感じます。表現がなければ生きられない、それくらい生きるということはしんどいものだと思うんですよ。少なくとも自分は、表現によって救われたということもあるし表現があることで人生が豊かになっている。ですからそれに対する恩返しというか、もちろんどれだけの力が自分にあるかはわからないんですけど、表現に救われたその恩を、表現で返せるといいなという思いが、どこかにある気がします。
池ノ辺 確かに、映画を観たりすると、感情が豊かになりますもんね。そうすると人間の魂が豊かになって、豊かになれば、生きていこうと思うし、夢を持とうと思える。私たちも予告をつくることでそのお手伝いをさせていただいていると思っています。
最後の質問になりますが、津田さんにとって映画ってなんですか。
津田 難しい質問ですね。生きるための必須栄養素、今はそんな感じがします。
池ノ辺 その必要なことを、津田さんは世の中の人に提供しようとしているということですね。これからのご活躍、楽しみにしています。でもたまにはゆっくり温泉に行ったりして休んでください(笑)。
インタビュー / 池ノ辺直子
文・構成 / 佐々木尚絵
写真 / 吉田周平
アニメ、洋画吹替、ナレーターなどの声優業・舞台や映像の俳優業を中心に、映像監督や作品プロデュースなど幅広く活動している。第十五回(2020年度)声優アワード主演男優賞。Netflix配信中『テルマエ・ロマエ ノヴァエ』ルシウス役。
かつてない隆盛を誇った大国、ローマ帝国。この国の繁栄を支えたローマ人にとって、浴場=テルマエは生活に欠かせない存在。浴場技師の祖父と父を持ち、やがて自身も浴場技師となったルシウス。しかし設計のアイデアが古いと事務所をクビになり、浴場技師としての窮地に立たされていた。ある日、公衆浴場の大きな排水溝に吸い込まれそうになり、急流に流されながらたどり着いた先は、なんと現代日本の銭湯。タイムスリップしたと知らないルシウスは、壁画のペンキ絵やフルーツ牛乳などの銭湯文化に感動。そこで知った快適な入浴のためのアイテムを次々とローマに持ち帰り、人気の浴場技師になっていく。
監督:畳谷哲也
原作・シリーズ構成:ヤマザキマリ
キャスト: 津田健次郎、小林親弘、小林沙苗、日野聡、磯部勉、瀬戸麻沙美、池田秀一、櫻井孝宏、細谷佳正、榎木淳弥
Netflixにて全世界独占配信中