Aug 21, 2021 interview

第74回カンヌ国際映画祭 全4冠受賞作 映画『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督が語る、編集や予告、映画作りの視点について

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核となるテイクを活かすことで50時間を3時間に凝縮する

池ノ辺 監督は編集をする前に、OKとかNGを出さないで撮った素材は全部観るって聞いたんですけど。それはいつもの手法なんですか?

濱口 正確に言うと、もちろん現場でOKは出します。出さないと進まないので。ただ、NGという言い方は出来るだけしないようにしています。というのも、どのテイクも決して悪いものではないと思っていますから。ただ、あるテイク、あるカットのOKは現場では出すんですが、編集のときに改めて全部見て、もう一回OKとNGを出し直すということをします。編集の山崎(梓)さんが、50時間分ぐらいの素材があったんじゃないかと言っていました。

池ノ辺 50時間から3時間にするのって、すごく大変じゃないんですか?

濱口 もちろん観るのは大変ですが、核となるテイクが決まってくれば、その核となるテイクをどうやって活かしていこうかっていう形でシーン自体が構築されていくので、1個決まれば他の可能性を狭めてくれるので。もちろんそれでも大変ですが、不可能に近い大変さみたいなことではないです。

池ノ辺 シーンの核となるテイクを選んだ後は、編集ではどんなことするんですか?

濱口 例えば、このシーンの演技が素晴らしく、それがあるアングルで一番良く捉えられているというところがあれば、それを見せようとする。それが西島(秀俊)さんだったら、西島さんをまず見せる。ただ、西島さんを見せるだけではその空間で起きていることの全体は伝わらないので、ここで西島さんが感じているであろうことが観客により伝わりやすくするために、例えばここで霧島(れいか)さんのアングルにした方が良いかもしれない。別のシーンで、ここで三浦(透子)さんの表情が無ければ、現場で感じていたような感覚を感じないなと思ったら、それをはめていくというか。それが自分にとってすっきりした流れになるっていう作業ですね。そんなにガチャガチャはめかえるという感じでもないんですけど、やっぱり作業量自体が多くて大変ではあります。