台本のデザインから始まった『キネマの神様』
池ノ辺 本当に、『キネマの神様』までご縁がつながっているんですね。今回はポスターだけでなく、タイトルロゴや台本の表紙のデザインもされているんですよね。
森本 台本って、役者さんを含め映画に関わるスタッフの方が毎日持ち歩くものじゃないですか。それで、「ただ文字が打ってあるだけじゃなくて、台本のカバーも大事なんじゃないかな? でも明後日ぐらいには入稿したいな」みたいな話が出まして(笑)。
池ノ辺 それは誰が言ってるんですか。旦那さんが?
森本 そうです(笑)。依頼というより、そんな気持ちを知ってしまうと、やらざるを得ないというか・・・。まず監督に見ていただかなければと、台本のデザインに取り組みました。これは本の装丁のようなものなので、内容を理解するために台本の中身も読ませていただいて、台本のカバー案と、『キネマの神様』という文字を書家の方にも書いてもらったり、弊社の後ろの白壁がいっぱい埋まるぐらいに、何パターンもみんなで書いて作りました。
池ノ辺 そうやってデザインされた台本を、スタッフ、キャストの皆さんが手にとって撮影が始まったわけですね。
森本 まずは菅田将暉さん、永野芽郁さんによる若かりし頃からの撮影が無事スタートして、どんな風になるのかなって楽しみにしていました。その次に宮本信子さん、小林稔侍さん、そして志村けんさんが出演される現代パートの撮影に向けての本読みが始まって、映画が完成に向かうのかなと思っていたら、まさにその頃、コロナが。
池ノ辺 この段階では、広告について打ち合わせはされていたんですか?
森本 これから広告はどういうふうに作って、上映まで盛り上げていこうかというのを、松竹の宣伝部の皆さんとちょうど話し始めていた頃でした。コロナで映画館にみんなが足を運べなくなっている状況の中で、映画を見るということそのものをメッセージしていってもいいのではないかという企画を考え始めていたんです。その最中に、志村さんがコロナに感染されて、一日も早くも無事に回復されることを願いながら企画をしていたんですけれども、その願いは繋がらず、お亡くなりになられてしまいました。