Aug 07, 2021 interview

映画『キネマの神様』アートディレクター 森本千絵 クリエイティブで人と人の縁をつなぐということ

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志村けんさんの死――主演交代を広告はどう表現するか

池ノ辺 主演の志村けんさんがお亡くなりになったので、『キネマの神様』はどうなるんだろう? と思っていたのですが、広告の展開も変わったわけですね?

森本 本来は、また映画館に来てほしいねということをプロモーションしようとしていたんですけれども、急遽、企画を一回止めて。その後、沢田研二さんが新たに意志を継いで演じるという情報も入るなかで、志村さんの四十九日に松竹の皆さんと、こういうものを打ち出すことになりました。

あなたがいたから
私でいられた
人と人がつながれない
そんな今だから
あなたのことを 思います

池ノ辺 このコピーは、『男はつらいよ』のときと同じく、佐倉康彦さんのコピーですね。

森本 そうです。この前から、映画館と今の状況ということで「人と人がつながれない そんな今だから」という言葉が生まれ始めていたんですけど、よりいっそう、「あなたがいたから」という部分と、「あなたのことを思います」という形で、志村さんへの気持ちも込めて。

池ノ辺 この広告は、スクリーンに志村さんの笑顔が映っていて、右下には新たに沢田研二さんの名前が入っているんだけど、大々的に主役交代とか書いてるわけじゃなくて、志村さんをリスペクトしながら、すごく自然に引き継いで作っていくということが伝わりますね。

森本 松竹の皆さんの意思を聞くと、代役ということではなくて、新たな『キネマの神様』として沢田さんが主演を務めることを伝える意味でも、この広告を打ち出すと。本来だったら「代役か?」とかトピックのようにされてしまう情報じゃないですか。そうではなくて、この広告1枚だけが伝わって、このまま各新聞に掲載されたり、テレビに映ったことで、志村さんに静かに手を合わせながら、沢田さんが主役を演るという情報を受け止めることにつながったんじゃないかと思います。