Aug 07, 2021 interview

映画『キネマの神様』アートディレクター 森本千絵 クリエイティブで人と人の縁をつなぐということ

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ものを作ることは五感のひとつ

池ノ辺 今日のお話を聞いて、ポスターだけじゃなく、台本からキャストの交代を告げる広告、パンフレットまで、映画作りの最初から最後までを一緒に歩んで行くお仕事なんだなと思いました。

森本 蛇腹の巻物みたいに、いつが始まりで、いつが終わりなのかわからない形で、いろんなお仕事がずっと回っている感じがします。

池ノ辺 全体も一緒にクリエイティブしていくっていうのは昔からなんですか?

森本 広告を企画する際に、ただその商品を売るという情報だけではなくて、そこに感情的な部分というか、ストーリーを組み込んで企画するのが大切だと思っています。例えば、ある飲料を1つ発売するにしても、必ず絵本のような形で物語を紡いで企画を立案して、それから形にしていくんです。『キネマの神様』はクリエイティブするというよりは、山田監督の描きたい世界がきっちりとあるから、それをまだ監督の映画を見たことがない世代の方とか、なかなか映画館に足を運ばないという方々との間のご縁をつないでいるという感じです。

池ノ辺 間をつなぐことを意識してお仕事をされているんですね。

森本 間にいるのが心地いいです、私は。海よりも、砂浜より、波打ち際が好きなんです(笑)。時々それが崖っぷちにもなりますが、そういう糊代の部分を担うことで、いつも多くの学びをいただいています。

映画『キネマの神様』アートディレクター 森本千絵 クリエイティブで人と人の縁をつなぐということ

池ノ辺 私は予告編を作っているのですが、予告編のディレクションに興味はありませんか?

森本 予告編も作りたいですね。私、コマーシャルの演出をやっているときに、映画の予告編みたいってよく言われます。だから撮影時間も予算も大変なことになっちゃうんですけど(笑)。

池ノ辺 映画は完成したものから抜き出して予告を作るから、15秒とか30秒のCMで同じことをやろうとすると大変ですよね。でも、それぐらい世界観を作り込んでいると、短いものでも感じ取ってくれる人は多いでしょうね。

森本 そういう想像力をかき立ててくださる感想を聞くと、映っていない背景を見ようと、感じようとしてくれてるんだなって思います。

池ノ辺 最後に、森本さんにとって、もの作りって何ですか?

森本 私にとっては心を開くことですね。私はアートがなかったら何も伝えられなかったと思います。右に行きたいか、左に行きたいかも。どこに向かっていいのか、何を発していいのかわからなくなっちゃいます。ものを作ることで、自分が向かう先を見える形にしてくれます。コミュニケーションするための五感のひとつですね。

インタビュー / 池ノ辺直子
構成・文 / 吉田伊知郎
撮影 / 吉田周平

プロフィール
森本 千絵(もりもと ちえ)

goen°(ゴエン) / 主宰・アートディレクター

青森県三沢市出身。人に伝えるための絵作りに早くから目覚め、中学生の頃から広告会社を目指す。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を経て博報堂入社。2007年、もっとイノチに近いデザインもしていきたいと考え「出会いを発見する。夢をカタチにし、人をつなげる」をモットーに株式会社goen°を設立。代表作にはNHK大河ドラマ「江」、朝の連続テレビドラマ小説「てっぱん」のタイトルワーク、松任谷由実「宇宙図書館」、Mr.Children「HOME」「SUPERMARKET FANTASY」のデザイン、SONY「make.believe」、組曲、Right-on、AZUL のCM演出、サントリー東日本大震災復興支援CM「歌のリレー」の活動、Canon「ミラーレスEOS M2」、KIRIN「8月のキリン」、「一番搾り」、「一番搾り 若葉香るホップ」のパッケージデザイン、など、広告の企画、演出、商品開発、ミュージシャンのアートワーク、本の装丁、映画・舞台の美術や、動物園や保育園の空間ディレクションを手がけるなど活動は多岐に渡る。

株式会社goen° goen-goen.co.jp

作品情報
映画『キネマの神様』アートディレクター 森本千絵 クリエイティブで人と人の縁をつなぐということ
映画『キネマの神様』

“映画の神様”を信じ続けた男の人生とともに紡がれる愛と友情、そして家族の物語。無類のギャンブル好きなゴウは妻の淑子よしこと娘の歩にも見放されたダメ親父。そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。それは「映画」。行きつけの名画座の館主・テラシンとゴウは、かつて映画の撮影所で働く仲間だった。若き日のゴウは助監督として、映写技師のテラシンをはじめ、時代を代表する名監督やスター女優の園子、また撮影所近くの食堂の看板娘・淑子に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかしゴウは初監督作品の撮影初日に転落事故で大怪我をし、その作品は幻となってしまう。あれから約50年。歩の息子の勇太が、古びた映画の脚本を手に取る。その作品のタイトルは、『キネマの神様』。

監督:山田洋次

原作:原田マハ「キネマの神様」(文春文庫刊)

出演:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎 / 北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子

配給:松竹

©2021「キネマの神様」製作委員会

8月6日(金) 全国公開

公式サイト:kinema-kamisama

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、「ボディーガード」「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ」「マディソン郡の橋」「トップガン」「羊たちの沈黙」「博士と彼女のセオリー」「シェイプ・オブ・ウォーター」「ノマドランド」ほか1100本以上。最新作は「フレンチ・ディズパッチ」。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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