Oct 20, 2019 interview

映画宣伝30年のベテランはなぜ映画のデジタルプロモーション会社へ移籍したのか? ガイエ ゼネラルマネージャー 大場渉太

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東京国際ファンタスティック映画祭の醍醐味

――大場さんは東京国際ファンタスティック映画祭を復活させたいと前から言ってましたけど、ガイエさんに移ったことと関係あるんですか?

そうなんですよ。ガイエに誘われたときに、「映画祭やりたいんでしょ? ウチもやりたいんだけど」って言ってくれたんですよ。東京ファンタは、アナログな感じで昔はやっていましたが、ガイエでやるのであればマーケティングをしながら今の時代に合わせたデジタル的な形で一緒に盛り上げられるんじゃないかなと思ったんですよ。

――準備は進んでいるんですか?

今、諸々やってます。たぶんこのインタビューが出た後くらいには、『復活!?東京国際ファンタスティック映画祭』というイベントをやろうと。もちろん、以前の東京ファンタに関わっていたところにはもう仁義を切っていて、僕がチーフディレクターをやっていた、『したまちコメディ映画祭in台東(したコメ)』で協力してもらったところとも話をしていて、応援してくれる体制は出来上がっています。

――大場さんにとって、東京ファンタの魅力って何? 私も一回だけ予告を作らせてもらったことがありますけど。

それはもう、みんなで映画を楽しもうというライブ感! あれがやっぱり東京ファンタの醍醐味ですね。1回目のときは、スタッフじゃなくて大学生だったんですけど、大学の先輩に今は『別冊映画秘宝』編集長をやっている田野辺(尚人)さんがいたんです。それで『悪魔のいけにえ2』が上映されたときに、「大場くん、トビー・フーパーが来るから会場の渋谷パンテオンにチェーンソーを持って行って暴れよう!」「チェーンソーなんて持っていませんよ」って言ったら、田野辺さんは本物のチェーンソーを当日持ってきて「これだよ!」ってパンテオン前で出すんです。「これ燃料入ってます?」「危ないから抜いておいた。これが我々のトビー・フーパーに対する気持ちだ!」って言うんだけど、入口でパンテオンのスタッフに「なんですか、それは!」って取り上げられて(笑)。

――動かなくてもダメなのね。

だって本物のチェーンソーなんて持ち込めませんよ。田野辺さんは「仕方ない。諦めよう」って言ってましたけど(笑)。これは特殊な例ですけど、単に映画を観るだけなのに、お客さんがいろんな思いを持って集まってくる映画祭が東京ファンタだと思うんですよ。僕はずっとB級とジャンル映画が好きだったけど、なかなか観られるところが無くて。それが東京ファンタでは、同じ思いを抱いていた仲間が集まるわけですよ。『エルム街の悪夢』を映画館で観たことがない、『デッドゾーン』を輸入版でしか見たことが無い人たちが大スクリーンでやっと観られるって集まって、スポンサーから無料で何杯でも提供される酎ハイを飲みながら、自然にみんな声が出たり、拍手が起きて。なんて素晴らしい映画体験だろうって思ったわけですよ。

縁とタイミングが結びついた今

――今の応援上映の走りですよね。

今はそういった上映がどんどん増えていて、絶叫上映とか爆音上映とか、映画館がライブを楽しむような場所になってきているじゃないですか。いろんなデバイスで家でも映画が観られるのに、応援上映やるって行ったらチケットが完売したりする。これは映画が好きな人が集まって楽しむ空間が欲しいという表れだなって思うと、そろそろ我々が体験してきた東京ファンタを今の時代に甦らせて、若い人たちと作る意義があるんじゃないかなと思ったんですよ。

――開催はいつですか?

まぁ、あんまり焦って進めようとは思っていませんけど来年2020年は東京オリンピックで日本中盛り上がるだろうから、秋は文化の祭典で盛り上げたらおもろいなーとか考えてたり、もともと『東京ファンタ』の開催地であった渋谷・新宿も最近いい方向での再開発が行われてたりしてますので、そういういろんな状況を診つつ進めていければと思っています。でもまずはこの映画祭を応援する企業さんとか協賛どんどん探さないとなんですけどね(笑)。

――ガイエさんとの出会いがあって、大場さんの夢が叶い始めたわけですね。

人との縁とかタイミングとか、そういうものが全部ハマったんでしょうね。でも、まだこれからですけどね。今は地盤を固めているところなので、ここからガイエとして映画祭や配給宣伝をやっていくには越えなきゃいけない山はいっぱいあります。ただ、やっていて辛くはない。若い人と仕事をするのも刺激的だし、むしろ楽しいですよ。だからガイエに来ようと決断したことには何の後悔もないですね。

インタビュー/池ノ辺直子
構成・文/吉田伊知郎
撮影/江藤海彦

プロフィール
大場渉太(おおばしょうた)

株式会社ガイエ 配給宣伝事業部 部長/ゼネラルマネージャー/宣伝プロデューサー 映画祭チーフディレクター

中学2年生の時に映画業界に進む道を決める。映画宣伝会社P2でパブと映画祭を9年間従事、その後日活株式会社に入社。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を担当し大ヒットを記録。その後一旦退社し5年間フリーで宣伝プロデュース&様々な映画祭を担当。その後、日活に再入社して最後の4年間は東京テアトル株式会社に出向し宣伝プロデュース業を務める。担当した主な作品や映画祭に『(ハル)』『冷たい熱帯魚』『ヤッターマン』『マルホランド・ドライブ』「フランス映画祭」「サンダンス映画祭」「東京国際ファンタスティック映画祭」「ゆうばり冒険国際ファンタスティツク映画祭」。

作品情報
シン・ファンタ / 東京国際ファンタスティック映画祭ナイト

応援上映やジャンル映画が世を賑わせ、若者もその熱狂の渦に呑み込まれる昨今の映画界隈。その元祖ともいえる存在である「東京国際ファンタスティック映画祭」という名の虚構が、14年もの永い眠りから今年の東京国際映画祭のオールナイトで咆哮をあげる…。その名も、「シン・ファンタ」。

日程:2019年11月2日(土) オールナイトイベント
会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ 22:00開場 22:30開演

公式サイト:https://www.tiff-jp.net

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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