Apr 11, 2017 interview

第7回:『3月のライオン』は究極を目指した。心が弾む日本映画を見ると、この人と仕事をしたいという欲望が湧き上がってくる。

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谷島

それを宣伝で培ってきたんですよ。

宣伝って、いまここでパッと見た瞬間に面白そうだと思うかどうかだけなんですよ。

よく映画のプロデューサーで、この脚本を読んでくれとか持って回るじゃないですか。

脚本なんて読んだって、普通の人はわからないですよ。

だから企画書の一番上に何を書くかなんですよね。

それを宣伝から学んできたんです。

出版社とかに通って、映画を売り込むのに「監督は○○で、脚本は△△という人で・・・」と言っても誰も聴いちゃくれない・・・

池ノ辺

もういいですってなるよね。

谷島

そこで相当鍛えられたわけ。

初めて会った人を、パッと見て何に興味があるか、ある程度検討を付けてポイントを絞る。

それを10何年やってきたから。

映画の企画書もそうだよね。

1ページ目をパッと開いたときに面白そう!と思えることを書き、表現する。

池ノ辺

その企画書を読んで、お金を出しましょうとなるわけですよね。

谷島

だから映画って企画なんですよ。

製作でも宣伝でもなく企画。

その上で、面白そうな企画を作るためには、製作と宣伝をある程度解っていないと作り出せないんだよね。

配信で難しいのは、企画書の最初のページに何を書くか。

3Dの意義もかけた、4Kの意義もバーチャルリアリティも書いた。

でも配信は、映像そのものは全く変わらないから新しさがまだつかめない

池ノ辺

そろそろ時間です。

最後に、谷島さんにとって映画とはなんですか?

谷島

見たことがない世界を見せるもの。

それが映画。

池ノ辺

それは作る側としてですよね? 仕事を離れての映画ってなんですか?

谷島

だって(笑)。

3DやVRなんかの先進技術を試して、それを経由しながら、体感映画、見たことがない世界を今日まで延々と突き詰めた訳。

スクリーンに観客を引き込むぞ、没入させようって、デジタルの恩恵とアナログの威力を両面から追求した。

その究極を目指し、敢えてドラマに立ち返り、見る人に肉迫する『3月のライオン』をやった。

そんな今・・・難しいなぁ、仕事じゃなくて、個人的に??

DSC04215

映画『3月のライオン【後編】』より

池ノ辺

だってみんな仕事につながっちゃうんだもん、谷島さんは。

谷島

私生活も仕事もイコールだということになっちゃうよね、ここまで溺れると。

映画って・・・生活かな?

池ノ辺

人生ではない?

谷島

人生をダイナミックに見せる映画は好きで、作りたいけど、そうじゃないなぁ。

じゃ映画とは、好奇心と発想。

その源(笑)。

やっぱり最も興奮したり躍動できるものであることは間違いない。

池ノ辺

感動というよりも、興奮や躍動なんですね。

谷島

当然、涙も流すし感動もするよ。

でも、僕の中では映画を見ているとやっぱり躍動するんだよね。

外国映画はもうこの歳では手が届かないけど、そういう心が弾む日本映画を見ると、この人と仕事をしたいという欲望が湧き上がってくる。

池ノ辺

それがこれからも続いていくわけですね。

谷島

映画は絶対滅びない。

一瞬滅びるかなと思ったけど、やっぱり滅びない。

(文:モルモット吉田 / 写真:杉本晴)


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映画『3月のライオン』

漫画家・羽海野チカの大ヒットコミックを、映画『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督と神木隆之介の主演で、【前編】【後編】堂々二部作による完全実写映画化。幼い頃に家族を無くした17歳の将棋のプロ棋士・桐山零。橋を渡った町に住む三姉妹に温かく見守られ、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける棋士たちとの激闘に飛び込む。しかしある事件が、愛する三姉妹を襲う…。闘うことでしか生きられない少年の魂がぶつかり合う感動のエンタテインメント。『君の名は。』の絶好調の神木隆之介を始め、有村架純、倉科カナ、染谷将太、佐々木蔵之介、伊藤英明、豊川悦司などの豪華キャストが結集し、凛々しく、美しく、凄まじい物語を演じ上げる。

監督:大友啓史 原作:羽海野チカ(白泉社刊・ヤングアニマル連載中) 脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史

出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊勢谷友介、伊藤英明、豊川悦司 ほか

【前編】3月18日(土)大ヒット上映中 【後編】4月22日(土)公開 2部作連続・全国ロードショー 配給:東宝=アスミック・エース 公式サイトhttp://3lion-movie.com

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PROFILE

■谷島正之(たにしま・まさゆき)

アスミック・エース株式会社 配信企画プロジェクト推進室長、兼コンテンツ事業部・グルーブ長 1967年東京出身。91年にヘラルド・エース、現アスミック・エースに入社。宣伝部に所属し、『海の上のピアニスト』『カルネ』『ザ・リング』『のぼうの城』など、洋画・邦画問わず30本以上の作品を宣伝プロデュース。2007年から製作部に所属し、『きまぐれロボット』(辻川幸一郎/07)、『西の魔女が死んだ』(長崎俊一/08)、アジア圏初のデジタル3D映画『戦慄迷宮3D』(清水崇/09)、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作『鉄男 THE BULLET MAN』(塚本晋也/09)、『ラビット・ホラー3D』(清水崇/10)を製作。共同製作として『さくらん』(蜷川実花/07)『ヘルタースケルター』(蜷川実花/12)。最近では、増田セバスチャン監督による極彩色ミュージカル・ファンタジー『くるみ割り人形』(14)、園子温監督作『リアル鬼ごっこ』(15)、白石和彌監督作『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』(15)を製作。現在、大友啓史監督との7年越しの映画『3月のライオン』の【前編】が公開中。4月22日には『3月のライオン』【後編】がいよいよ公開。著書に「3D世紀/驚異!立体映画の100年と映像新世紀」(ボーン・デジタル刊/共著)ほか。

谷島正之 共著  「3D世紀/驚異!立体映画の100年と映像新世紀」 (ボーン・デジタル刊)

原正人さん監修 「日本ヘラルド映画の仕事-伝説の宣伝術と宣材デザイン-」 (谷川建司著/パイインターナショナル刊)

<主な製作作品> 2005年 『大停電の夜に』(05/源孝志監督):アソシエート・プロデューサー / 06年 『デス・ルーム』(06/ジョー・ダンテ、ケン・ラッセル監督他):共同プロデューサー / 07年 『きまぐれロボット』(07/辻川幸一郎監督):企画・プロデュース、『さくらん』(07/蜷川実花監督):アソシエート・プロデューサー / 08年 『西の魔女が死んだ』(08/長崎俊一監督):プロデューサー 、『明日への遺言』(08/小泉堯史):プロデューサー・アシスタント、『グーグーだって猫である』(08/犬童一心監督):共同プロデューサー / 09年 『戦慄迷宮3D』(09/清水崇監督):プロデューサー、『鉄男 THE BULLET MAN』(09/塚本晋也監督):プロデューサー / 10年『ラビット・ホラー3D』(11/清水崇監督):プロデューサー / 11年 『がんばっぺ、フラガール!』(11/小林正樹監督):共同プロデューサー / 12年 『ヘルタースケルター』(12/蜷川実花監督):アソシエート・プロデューサー / 14年 『アラサーちゃん 無修正』(14):企画、『くるみ割り人形』(14/増田セバスチャン監督):プロデューサー / 15年 『リアル鬼ごっこ』(15/園子温監督):プロデューサー 、『リアル鬼ごっこ ライジング』(15/大畑創、内藤瑛亮、朝倉加葉子監督):企画・プロデュース、『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』(15/白石和彌監督):プロデューサー 、『さくらん【4K版】』(07/15)『博士の愛した数式【4K版】』(06/15):4K化プロデューサー / 16年 『ハチミツとクローバー【4K版】』(05-06/16):4K化プロデューサー / 17年 『愛のむきだし【最長版 ザ・テレビショー】』(17/園子温監督):企画・プロデュース 、『3月のライオン』(17年/大友啓史監督):プロデューサー

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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