Mar 31, 2017 interview

第4回:「宣伝を操れるようになれば、自ずとプロデューサーもできるようになるから」と言われたんです。

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池ノ辺

それはすごい。

ヘラルド・エースに入社して、その後にアスミック・エースになるんですよね?

谷島

僕は、会社が変わったという意識はないんです。

原さんにくっついて行ったら、ヘラルド・エースがヘラルドから独立して、角川の資本がついてエース・ピクチャーズという会社になって、その後アスミックとエース・ピクチャーズが合併してアスミック・エースになる。

だから、ずっと原さんの横にいただけで、会社は変わってないのだけれど、資本関係は変わっていったという感じ。

池ノ辺

その中で印象に残っている作品はなんですか?

谷島

これを買ってくれ、自分で宣伝をやりたいと初めて言ったのが『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』。

選択が映画マニアっぽいよね(笑)。

かの問題作、コッポラ監督の『地獄の黙示録』のドキュメンタリー映画です。

“『地獄の黙示録』の撮影裏側は、映画以上にもっと戦場でした”という宣伝コンセプト(宣伝方針)でやりたいと。

池ノ辺

これが初めての宣伝プロデューサーで、プランニングも手がけたんですね。

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谷島

ちょっと話は飛びますけど、最近出版された、原正人さんが監修した凄い本『日本ヘラルド映画の仕事 伝説の宣伝術と宣材デザイン』の“付録”って何か知ってますか?

池ノ辺

『地獄の黙示録』のフィルムが付いているんですよね!

谷島

有楽座で上映した時に使用された70mmフィルムが、この本に入っているんです。

これを蔵出ししたのは僕なんですよ。

池ノ辺

えっ、谷島さんが趣味でフィルムを持っていたってこと?

それダメじゃないですか(笑)。

谷島

『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』の宣伝をやった時に、もともと『地獄の黙示録』の配給が日本ヘラルドだったから、大井競馬場の近くにある倉庫に、何か資料が眠っていないか徹底的に調べた。

そうしたら、埃に塗れて70mmのフィルムが8巻あったのよ。

池ノ辺

プリントが8本?

谷島

1本の映画で8巻。でっかいアタッシュケースの様なものに入っていて、その中から「ワルキューレの騎行のシーン」はこのあたりだろうという2巻をもらってきました。

当時、その『ハート・オブ・ダークネス~』の前売り券にノベルティとして、70mmのフィルムをひとつひとつ切って“しおり”にして付けて売ったんです。

でもまだ山のように残っていて、捨てるのも忍びないから家の押入れの中にずっと置いていたのをこの機に拠出したんです。

池ノ辺

じゃあ、その他にもプリントを持っているのがあるんですか?

谷島

予告編はいっぱい持ってる。

『悪魔のいけにえ』の初公開時の、ヘラルドが作った、やたらとナレーションの多い4分の日本版予告編とかね。

でも不思議な巡り合わせだよね。

原さんの記念すべき書籍に自分が延々と隠し持っていた70mmのフィルムを提供できた。

池ノ辺

そのあと谷島さんが手がけたのは何ですか?

谷島

宣伝部という仕事をやっていくと、2つに分かれます。

宣伝が好きで一生宣伝だけを愉しみたいという人と、自分で映画の買い付けをし、その作品を宣伝したいという欲望が出てくる人がいる。

そういう意味では、『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』というのは僕が自分で見つけたのではなくて、原さんから「こういう映画があるけど興味あるか?」と言われて、やりましょうと提案したもの。

このあとでサンダンス映画祭へ出張を命じられて、若い新しい監督たちの作品の中にいいものがあれば買ってきたらどうだと言われたんです。

当時のサンダンスは若き才能の登竜門でしたから。

池ノ辺

初めて自分で買い付けをすることになるんですね。

(文:モルモット吉田、写真:杉本晴)


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映画『3月のライオン』

漫画家・羽海野チカの大ヒットコミックを、映画『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督と神木隆之介の主演で、【前編】【後編】堂々二部作による完全実写映画化。幼い頃に家族を無くした17歳の将棋のプロ棋士・桐山零。橋を渡った町に住む三姉妹に温かく見守られ、頭脳と肉体と精神のすべてを賭ける棋士たちとの激闘に飛び込む。しかしある事件が、愛する三姉妹を襲う…。闘うことでしか生きられない少年の魂がぶつかり合う感動のエンタテインメント。『君の名は。』の絶好調の神木隆之介を始め、有村架純、倉科カナ、染谷将太、佐々木蔵之介、伊藤英明、豊川悦司などの豪華キャストが結集し、凛々しく、美しく、凄まじい物語を演じ上げる。

監督:大友啓史 原作:羽海野チカ(白泉社刊・ヤングアニマル連載中) 脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史

出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊勢谷友介、伊藤英明、豊川悦司 ほか

【前編】3月18日(土)大ヒット上映中 【後編】4月22日(土)公開 2部作連続・全国ロードショー 配給:東宝=アスミック・エース 公式サイトhttp://3lion-movie.com

PROFILE

■谷島正之(たにしま・まさゆき)

アスミック・エース株式会社 配信企画プロジェクト推進室長、兼コンテンツ事業部・グルーブ長 1967年東京出身。91年にヘラルド・エース、現アスミック・エースに入社。宣伝部に所属し、『海の上のピアニスト』『カルネ』『ザ・リング』『のぼうの城』など、洋画・邦画問わず30本以上の作品を宣伝プロデュース。2007年から製作部に所属し、『きまぐれロボット』(辻川幸一郎/07)、『西の魔女が死んだ』(長崎俊一/08)、アジア圏初のデジタル3D映画『戦慄迷宮3D』(清水崇/09)、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品作『鉄男 THE BULLET MAN』(塚本晋也/09)、『ラビット・ホラー3D』(清水崇/10)を製作。共同製作として『さくらん』(蜷川実花/07)『ヘルタースケルター』(蜷川実花/12)。最近では、増田セバスチャン監督による極彩色ミュージカル・ファンタジー『くるみ割り人形』(14)、園子温監督作『リアル鬼ごっこ』(15)、白石和彌監督作『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』(15)を製作。現在、大友啓史監督との7年越しの映画『3月のライオン』の【前編】が公開中。著書に「3D世紀/驚異!立体映画の100年と映像新世紀」(ボーン・デジタル刊/共著)ほか。

谷島正之 共著 「3D世紀/驚異!立体映画の100年と映像新世紀」 (ボーン・デジタル刊)

原正人さん監修 「日本ヘラルド映画の仕事-伝説の宣伝術と宣材デザイン-」 (谷川建司著/パイインターナショナル刊)

<主な製作作品> 2005年 『大停電の夜に』(05/源孝志監督):アソシエート・プロデューサー / 06年 『デス・ルーム』(06/ジョー・ダンテ、ケン・ラッセル監督他):共同プロデューサー / 07年 『きまぐれロボット』(07/辻川幸一郎監督):企画・プロデュース、『さくらん』(07/蜷川実花監督):アソシエート・プロデューサー / 08年 『西の魔女が死んだ』(08/長崎俊一監督):プロデューサー 、『明日への遺言』(08/小泉堯史):プロデューサー・アシスタント、『グーグーだって猫である』(08/犬童一心監督):共同プロデューサー / 09年 『戦慄迷宮3D』(09/清水崇監督):プロデューサー、『鉄男 THE BULLET MAN』(09/塚本晋也監督):プロデューサー / 10年『ラビット・ホラー3D』(11/清水崇監督):プロデューサー / 11年 『がんばっぺ、フラガール!』(11/小林正樹監督):共同プロデューサー / 12年 『ヘルタースケルター』(12/蜷川実花監督):アソシエート・プロデューサー / 14年 『アラサーちゃん 無修正』(14):企画、『くるみ割り人形』(14/増田セバスチャン監督):プロデューサー / 15年 『リアル鬼ごっこ』(15/園子温監督):プロデューサー 、『リアル鬼ごっこ ライジング』(15/大畑創、内藤瑛亮、朝倉加葉子監督):企画・プロデュース、『女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。』(15/白石和彌監督):プロデューサー 、『さくらん【4K版】』(07/15)『博士の愛した数式【4K版】』(06/15):4K化プロデューサー / 16年 『ハチミツとクローバー【4K版】』(05-06/16):4K化プロデューサー / 17年 『愛のむきだし【最長版 ザ・テレビショー】』(17/園子温監督):企画・プロデュース 、『3月のライオン』(17年/大友啓史監督):プロデューサー

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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