Mar 17, 2017 interview

第1回:『3月のライオン』は、読み終わった瞬間に大友啓史とやりたいと何かが湧き上がりました。

A A
SHARE

3_MG_9010_a

池ノ辺

なるほど。その月日の経過が、前半後半なんですね。

映画化するにあたって、最初にやったことは何ですか?

谷島

まず、監督はとにかく大友(啓史)さんでやりたいと。

池ノ辺

なぜ?

谷島

もともと僕の製作スタイルって、原作ものだったら、原作を読み終わった瞬間にパッと監督の名前が閃かなかったらやらないのよ。

原作ものに挑む上での最大のポイント、クリエイティブ・コンセプトなんです。

池ノ辺

かっこいいですね、それ。じゃあ、閃かなかったこともあった?

谷島

うん、山のようにある。全部挙げていきたいくらい(笑)。

池ノ辺

聞かないけど(笑)。

谷島

閃かなかったら、ダメなんですよ。

『3月のライオン』は、読み終わった瞬間に大友啓史とやりたいと何かが湧き上がりました。

それには理由があって、彼が作った『ちゅらさん』というドラマがあったんだけど。

池ノ辺

はい、NHKの朝のドラマ。

谷島

そうそう、あれは沖縄を舞台にしたホームドラマですね。

一方で大友さんは『龍馬伝』を撮っていて、あれは血の匂いがしたでしょ。

だから、ちゃぶ台の上のドラマと血の匂いが満ちる世界、その両極を撮れる人は大友監督しかいない!と思ったわけ。

池ノ辺

ちゃぶ台と血の匂い!

谷島

『3月のライオン』に出てくる川本家は、主人公にとって一つのユートピアなわけです。

池ノ辺

そう、川本家の食卓には美味しいご飯がいっぱい出てきました。

谷島

片や原作に出てくる将棋界というのは、みんな骨身を削って必死にもがき、戦っているじゃないですか。

残酷であり、極端に言うと血の匂いのする世界だと思った。

池ノ辺

その対比を表現できる人が大友さんだと閃いたんですね。

それが7年前?

谷島

「どうしてもあなたとやりたい」と六本木で会ったのは、大友さんがちょうどNHKを辞めた頃だから6年前かな。

『るろうに剣心』という映画をまだ撮っていなくて、クランクイン間近の、これから撮るぞという1か月か2か月前だったんです。

池ノ辺

こういう作品があるぞと大友さんに伝えた反応はどうだったんですか?

谷島

「ああ、こういう企画を俺はやりたかったんだよね」と。

多分、男っぽいアクションの企画をオファーされることが多かったんじゃないかな?

池ノ辺

『るろうに剣心』もそうですもんね。

谷島

だからこそ、『3月のライオン』をやりたいねという話になったわけです。

それから大友さんは『るろうに剣心』を撮って大ヒットメーカーになって、『プラチナデータ』がある、『るろうに剣心』の「京都大火編」がある、「伝説の最期編」があるという感じで、監督のスケジュールが空くのを待っていたような感じなんです。

池ノ辺

ということは、谷島さんがオファーした時には、もう監督のもとには他の企画がいっぱいあったわけですね。

谷島

そうそう。

まずは『るろうに剣心』を撮ることになっていて、それだけでも映画を完成させるまでに約半年以上はかかるという話になるじゃないですか。

そういうところで延々と順番を待っている間に原作も進んでいって、これはもう最後までやりたいねという話になったんです。

だから前後編になった理由は、大友さんを待っている間に原作が拡大していったからでもあるんですよね。

並行して、脚本との大格闘もありました。

機が熟したとはこの事です。