Jan 10, 2017 interview

第7回:これからも映画に携り、映画界を元気にしたい。

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池ノ辺直子の「新・映画は愛よ!!」

Season12  vol.07 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員 映画部門日本代表 佐野 哲章 氏

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映画が大好きで、映画の仕事に関われてなんて幸せもんだと思っている予告編制作会社代表の池ノ辺直子が、同じく映画大好きな業界の人たちと語り合う「新・映画は愛よ!!」 第7回は、。

→前回までのコラムはこちら

池ノ辺直子 (以下 池ノ辺)

2016年12月末日でソニー・ピクチャーズを勇退なさいましたが、この38年間をどう振り返っていますか。

佐野哲章 (以下、佐野)

学生時代に日本ヘラルド映画に入ったときから、映画業界ってスゴいなって思っていた特殊性があるんです。

それは、たとえば、007の映画が150億円の製作費を使って作られたとするでしょう。

一方、ミュージカル映画『アニー』は50億円ぐらいかもしれない。

なのに、入場料は一律なんですよ。原価に反映していない。

池ノ辺

そうですね!

佐野

『スパイダーマン』のようなハリウッドの大作なら、宣伝費に公開前後の数ヶ月で10億円とか使ってしまうし。

池ノ辺

他の業界で、宣伝費を公開しているなんてあんまりない(笑)

佐野

父親は貿易関係の仕事をしていましたが、原価1億円だったら1億2000万円で売って利益を出す。

でも映画の場合は、まったく原価と連動しないんです。

そんな商売ない。

しかも、5分遅れたら入れてくれない、携帯も使えない、タバコも吸えない。交通費も自腹(笑)にもかかわらず。

とても特殊な商売。

池ノ辺

大ヒットすれば、儲かるけど、コケれば大損する(笑)

佐野

これは究極の貿易だな、と思って(笑)。

実際、ヘラルド時代は、20代前半でしたが、景気がいい時代だったから年に4回ぐらいボーナスが出た。

『続・エマニュエル夫人』(74年)とか『ベンジー』(74年)あたりのときかな。

ある日、母親に「ボーナスこれくらいもらった」って言ったら、「お父さんには内緒にしてね。お父さんより多いから」って言われた。

これは、辞められないって思いましたね。

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池ノ辺

今は、映画業界はそこまで景気がいいとはいえない。

佐野

だからこそ、これからも映画業界になんらかの形でたずさわって盛り上げていきたい。

フィルムからデジタルに代わったり、技術的進化はありますが、映画が始まって120年、これからも映画は延々と生き延びていくと思うんです。

もっともっと観客のために良い映画を紹介したいし、若い人たちには「この業界すごいよ、入りな」といえる宣教師的な役割を果たせたらと思っています。

すべての業種にいえることですが、やっぱり人ありき。

いい人材が入ってくれば、その業界の未来は明るい。

残念ながら、外資系メジャーの映画会社は今はほとんど定期採用をしていないのが現状ですが。

池ノ辺

ほとんど経験者を中途採用していていますね。

佐野

だから、ソニー・ピクチャーズの社員にも言っていたの。

限られたチャンスを得られたのだから、喜んでください、ってね。

本当は、プロ野球とかと同じで、給料もよくないと夢がないんですけどね。

池ノ辺

キツイ、汚い、辛いの3Kじゃなく。

選ばれた人間だからこそできる仕事だと働く人にも誇りをもってもらいたいですね。

佐野

だから、いいお給料あげなきゃいけないし、そのためには映画人口を増やさなきゃいけなんですね。

映画会社が儲かること、それは雇用を支える。

残念ながら、2016年にハリウッドメジャーのひとつ、パラマウント映画の日本支社が閉まったりしてますが。

池ノ辺

映画人口を増やす、これは映画にたずさわる人すべてのテーマですね。

佐野

映画業界で働きたい優秀な人は、今もたくさんいます。

そういう人が、この業界を活性化していって欲しい。

だって、こんな素晴らしい仕事はないんだもの。

映画は、日本の基本的生活には必要のないものかもしれない。

衣食住が足りていれば、人はなんとか生きていけますからね。

でも、それ以外に何かひとつ選んでいいといわれたら、僕は、必ず「映画」を選びますね。

なぜなら心が豊になるから。

池ノ辺

そうなんですね。まさに映画は心を豊にしてくれる。心が豊になると夢が持てる。

夢が持てるようになると生きていこうと思う。

私もそういう信念をもって、予告編を作り続けています。

佐野さんも、少し休養したら、映画業界に必ず戻ってきてくださいね。

お待ちしています!

また、一緒にお仕事しましょう。

今回はお忙しい中、ありがとうございました。

(文:立田敦子、写真:岡本英理)


© 2016 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

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『バイオハザード:ザ・ファイナル』

カプコンが誇る世界的人気ゲームを、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で実写映画化した『バイオハザード』シリーズの最終章。

監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、アリ・ラーター、ショーン・ロバーツ、ルビー・ローズ、オーエン・マッケン、ローラ、イ・ジュンギ、ウィリアム・レヴィ、フレイザー・ジェイムズ、イアン・グレン、エヴァ・アンダーソン ほか

大ヒット公開中。

http://www.biohazard6.jp/

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PROFILE

■佐野哲章(さの のりあき) 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント (業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表)

1957年生まれ。1979年に日本ヘラルド宣伝部に入社。国際部・関西営業部を歴任。 1987年-1992年、ベストロン映画アジア地区代表取締役を経て、1992年アスキー・ピクチャーズ社長に就任。1994年にポリグラム極東地区担当マネージング・ディレクター、1995年にウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン(株) 旧ブエナビスタインターナショナルジャパン日本代表を経て現在に至る。2005年11月16日株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 業務執行役員/SVP 映画部門 日本代表に就任。

池ノ辺直子

映像ディレクター。株式会社バカ・ザ・バッカ代表取締役社長
これまでに手がけた予告篇は、『ボディーガード』『フォレスト・ガンプ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー シリーズ』『マディソン郡の橋』『トップガン』『羊たちの沈黙』『博士と彼女のセオリー』『シェイプ・オブ・ウォーター』『ノマドランド』『ザ・メニュー』『哀れなるものたち』ほか1100本以上。
著書に「映画は予告篇が面白い」(光文社刊)がある。 WOWOWプラス審議委員、 予告編上映カフェ「 Café WASUGAZEN」も運営もしている。
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