東京五輪が開催される2020年は、いったいどんな世界になっているのか? そんなごく近未来を舞台に、地方都市で暮らす平凡な女子高生が見るカラフルな夢がぎっしり詰まった劇場アニメーションが『ひるね姫』だ。主人公の見る夢と現実の世界が相互に影響を与え合い、思いがけない冒険ストーリーが奏でられていく。高畑充希、満島真之介、江口洋介、古田新太ら人気キャストが声優を務め、また夢の世界ならではのユニークなキャラクターたちの活躍も見逃せない。夢いっぱいのオリジナル作品として本作を完成させたのは、ハリウッド実写版の公開も待ち遠しい『攻殻機動隊S.A.C』や海羽野チカとのコラボ作『東のエデン』で知られる神山健治監督。本作を生み出す上で大切なキーパーソンとなった存在、これまでに最も影響を受けた作品、“師匠”押井守監督のこと……いろいろ聞いちゃいました。
──ポップでカラフルな夢がぎっしり詰まった『ひるね姫』ですが、『スター・ウォーズ』や『機動戦士ガンダム』を思わせる巨大メカも登場するという神山監督自身がかつて少年期に見ていた夢もいっぱい入っているようですね。
そうですね、そうかもしれません(笑)。
──夢をモチーフにした作品をつくろうと思ったきっかけは何だったんでしょうか?
昨今は、何も事件が起きない平穏な生活が続くことのほうがファンタジーじゃないかと考えたことが、最初のきっかけでした。東日本大震災以降の社会では、平穏であることのほうが豊かなファンタジーになってしまった。じゃあ、今回は巨大なカタストロフが起きたり、主人公が地球の危機を救おうとしたりしない作品にしてみようというのが『ひるね姫』のスタートだったんです。それで地方都市で暮らしている平凡な女子高生を主人公にした作品を考え始めたわけですが、やはり物語を大きく飛躍させるためには仕掛けが必要になる。そんなとき、僕の娘がまだ幼かった頃に、『桃太郎』などの絵本や童話を僕が読み聞かせていたことを思い出したんです。ただ、そのまま絵本を読むだけではつまらないから、僕が勝手に物語を創作して聞かせたりしていました。その体験をもとに、夢と現実が影響し合うというアイデアを思いついたんです。