- 古川:
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そこから、どのようにして「声優」になったのか、気になるなあ。
- 銀河:
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そんな生活を続けながらも、どっかで「音」に係わる仕事をしたいという気持ちがまだあったんでしょうね。それで青二プロダクションにテープを持ち込んで、元テアトルエコーのマネージャーだった黒田さんと社長の久保進さんに会っていただいたんです。
- 古川:
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「君のような金の卵に出会いたかった!」とか言われたんじゃない?(笑)
- 銀河:
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いやいや、そんなことは全くなく、今で言う「預かり」という形で、お世話になることになって、そこから本格的に「声優」をやっていくことになりました。
謎その2:なぜ悪役を極めようと思ったのか?
- 平野:
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銀河さんの最初の声のお仕事は何だったんですか?
- 銀河:
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1976年の『UFOロボ グレンダイザー』ですね。ズリルっていう敵側の科学長官の役をいただきました。今でもセリフは覚えていますよ。「地球か、美しい星だ」って。
- 平野:
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デビュー作から悪役だったんですね(笑)。それで、どうでしたか? 憧れていた声の仕事をやってみて。
- 銀河:
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こんなに難しいのかと驚きました。セリフを言おうと思った時には、もうそのシーンが終わっちゃっているんですよ。どこで声を出せばいいのか、さっぱりわからないんです。正しいタイミングが取れなくて、慣れるまでかなり時間がかかりました。今みたいにあらかじめ自分の出るシーンのDVDをいただけるなんてことはありませんでしたから、諸先輩方には怒られてばかりでした。
- 古川:
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現場に行って、そこで初めて脚本をもらうみたいな時代だったもんね。でも、銀河さんほどの人でもやっぱり最初は苦労したのか~。ちなみに、僕が銀河さんを知ったのは『惑星ロボ ダンガードA』(1977年)のドップラー総統役。すごいかっこいい声の声優さんが現れたなってビックリしたのを覚えてる。
- 平野:
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その役も悪役よね。銀河さんとしては、そのあたり、当時、どういったお気持ちだったか覚えていますか?
- 銀河:
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やっぱり、声質ってありますからね。絶対に古川さんのようなヒーロー役はやらせてもらえないんですよ。それにアニメの主人公ってだいたい十代じゃないですか。私の場合、声をどう作ってもそれは無理だから(笑)。
- 平野:
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そこはちょっとしたコンプレックスに?
- 銀河:
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いえ、それよりも、今、自分にこんな風に悪役が振られるのであれば、そこできちんと痕跡を残さないといけないなという気持ちが強かったですね。ここで跡を残さないと、先はないぞ、って。悪役は、僕がこの世界でやっていくための橋頭堡のようなものだったんです。
- 古川:
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それに、外画(洋画)とかだとしっかり主役もやっているよね。僕は銀河さんのチャック・ノリスの吹き替えとか、いい声だなぁって惚れ惚れしながら聞いていたもん。実はここだけの話、ピッコロ大魔王の声は、僕の中では銀河さんの声なんですよ。僕にあの声があったら、もっとかっこよく演じてあげられたのになってずっと思っていた。
- 銀河:
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いやいや、そんなことはないですよ。
- 古川:
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永井一郎さん(『機動戦士ガンダム』ナレーターなど)が言ってましたよ。僕らにはああいう重低音は出せないからうらやましいよね、って。