Jun 02, 2022 interview

『エリザベス 女王陛下の微笑み』の製作者が語る 戴冠70年となるエリザベス女王の“女優”としての資質

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誰にも想像できなかった、女王と英国王室のカジュアル化

ーー エリザベス女王が即位した1952年以降、英国王室も英国も大きく変わったんじゃないでしょうか。

エリザベス女王が即位した時代は、第二次世界大戦の影をまだ引きずっていましたが、とてもフォーマルな時代でもあったと思います。英国王室のマナーは、ヴィクトリア朝に続くエドワード朝(1901~1910年)の時代につくられたものが、現在のウィンザー朝(1917年~)にも受け継がれています。

それがエリザベス女王が即位してからの70年間で、少しずつカジュアルなものに変わってきているんです。社会の変化に、エリザベス女王が対応しようとしているからでしょう。英国王室もかつてのあがめられる存在から、ずいぶんと変わりました。ここまで英国王室がカジュアル化するとは、誰も想像できなかったはずです。

ーー 本作ではエリザベス女王が参加した華やかなイベントだけでなく、騎馬行進中のエリザベス女王に向かって若者が空砲を発砲した事件(1981年)、第二次世界大戦で激しい空爆を受けたドイツのドレスデンへの訪問(1992年)では生卵を投げられ、そして元ダイアナ妃の交通事故死(1997年)にも触れています。エリザベス女王はその場その場での対応が求められてきました。ケヴィンさんが特に印象に残っているのは、どのケースでしょうか?

エリザベス女王が即位してからの70年を振り返ると、英国王室は誤った対応は基本的にしていないと僕は感じています。強いて挙げるなら、元ダイアナ妃が亡くなった直後、英国王室はうまく状況を把握できていなかったことでしょうか。英国王室側に悪意があったわけではないけれど、元ダイアナ妃が亡くなり、英国民が悲しんでいることを、英国王室は読み取れなかったのです。

元ダイアナ妃の悲劇に対し、英国王室が追悼の意をすぐには示さなかったことに、多くの英国民は不満を感じたんです。でも、休養先のスコットランドからエジンバラ宮殿に帰ってきた際、門の前に追悼の花束を捧げる人たちが並んでいるのに気づき、エリザベス女王は車から降りて、言葉を交わしています。

その後は速やかに、女王としての追悼スピーチもしています。本作の中でも、その部分に触れています。チャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚(1992年)もあり、1990年代は英国王室にとっては困難な時期だったといえるでしょうね。