Jun 02, 2022 interview

『エリザベス 女王陛下の微笑み』の製作者が語る 戴冠70年となるエリザベス女王の“女優”としての資質

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2022年6月2日(木)から、英国ではエリザベス女王の戴冠70年を祝う「プラチナジュビリー」が盛大に催される。映画『英国王のスピーチ』(2010年)で有名な父・ジョージ6世が急逝し、25歳の若さで王位を継承したエリザベス女王。世界でいちばん有名なセレブともいえるエリザベス2世を主人公にしたドキュメンタリー映画『エリザベス 女王陛下の微笑み』(原題『Elizabeth: A Portrait in Part(s)』)が、日本では6月17日(金)より劇場公開される。

 ジュリア・ロバーツとヒュー・グラントが共演したロマンチックコメディ『ノッティングヒルの恋人』(1999年)やルーズベルト米国大統領とジョージ6世との交流を描いた『私が愛した大統領』(2012年)などで知られるロジャー・ミッシェル監督が、膨大な量になる英国王室の映像アーカイブを巧みに編集し、現代社会に実在する「お城の中で暮らす女王さま」の素顔を浮かび上がらせたものにしている。英国王室に興味がある人はもちろん、英国の君主、また英連邦の長として激動の時代に向き合ってきたエリザベス女王の足跡を振り返ることで、世界の近現代史を知ることもできる内容となっている。

 ミッシェル監督は残念なことに、本作の編集作業を終えた直後、2021年9月に亡くなったが、ミッシェル監督と長年タッグを組んできたプロデューサーのケヴィン・ローダー氏が本作の成り立ち、そして英国人にとってエリザベス女王はどんな存在なのかを語ってくれた。

コロナ禍だから生まれたドキュメンタリー映画

ーー 若き日のエリザベス女王のことを、ビートルズのポール・マッカートニーは「10代の男子には、セクシーに感じられた」と語り、『ローマの休日』(1953年)で可憐な王女を演じたオードリー・ヘプバーン、歴史大作『クレオパトラ』(1963年)に主演したエリザベス・テーラーの映像をコラージュするなど、とてもポップなドキュメンタリー作品に仕上がっていますね。

ありがとう、そう言ってもらえるとうれしいよ。今回の企画はミッシェル監督からの提案だったんだ。コロナ禍で新しい映画を撮影できない状況になり、空白の時間を有効に使おうとアーカイブ映像をもとにしたドキュメンタリー作品をつくることにしたんだ。いろんな企画が検討されたけど、ミッシェル監督が興味を持ったのはエリザベス女王だった。確かに、英国王室に関するアーカイブは膨大にあるけれど、ヘレン・ミレンが主演した『クィーン』(2006年)などの劇映画やドキュメンタリー作品はすでに数多くあるので、その点が僕は心配だった。

ーー ではミッシェル監督の企画のどこに、ケヴィンさんは魅力を感じたんでしょうか?

ミッシェル監督からドキュメンタリーをつくる上でいくつかのポイントを提案され、それがユニークなものだったんだ。ナレーションはいっさいなし、新たに取材することもしない、映像フッテージとして英国王室のものだけでなく、エリザベス女王の存在を象徴的に表現しているものも使う、映像は年代順に並べることはしない‥‥。そんな提案がミッシェル監督からあったんだ。謎の微笑みで有名な名画「モナ・リザ」とエリザベス女王が微笑む姿を比較して見せるなんて、面白いアイデアだと思ったよ。エリザベス2世を主人公にしたドキュメンタリーだけど、「女王」という概念について考えさせる作品にもなっているんじゃないかな。