Jun 02, 2022 interview

『エリザベス 女王陛下の微笑み』の製作者が語る 戴冠70年となるエリザベス女王の“女優”としての資質

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『ノッティングヒルの恋人』に通じるテーマ性

ーー ミッシェル監督は、大ヒット作『ノッティングヒルの恋人』でアイコン化された人気女優もひとりの生身の女性であることを描き、多くの共感を集めました。アイコン化された人物の素顔に迫るという点では、本作と『ノッティングヒルの恋人』は共通するものを感じます。

ジュリア・ロバーツも、エリザベス女王も、どちらも演劇性を感じさせる存在だという点が、面白いよね。女優はカメラの前で演技を披露し、女王は国民が見ている前で女王らしく振る舞う。演じているという点では、どちらも同じ。ある意味、女王であるということは女優と似ているんじゃないかな。女王は人前に出るときはきちんと身なりを整え、その場に合った衣装をコーディネイトし、国民から見ると奇妙に思える儀式にも出席する。そこには、すごく演劇性がある。

ミッシェル監督は本作を撮る前に、アイリーン ・アトキンス、ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ジョーン・プロウライトら英国を代表するベテラン女優たちの半生を追ったドキュメンタリー作品『Nothing Like a Dame』なども撮っていたんだ。演技者の生き方に、とても関心があったみたいだね。

エリザベス女王は大女優と同じような資質を持っていることを、ミッシェル監督は本作で掘り下げようとしたように僕は感じるよ。『ノッティングヒルの恋人』と違いがあるとすれば、ジュリア・ロバーツは本屋で運命の恋人と出逢うけれど、エリザベス女王には完璧なご主人・フィリップ王配がすでにいたということかな(笑)。

ーー なるほど、エリザベス女王は女優としての資質も備えているわけですね。2012年のロンドン五輪開会式でジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)と共演した際、エリザベス女王がとても堂々としていたことも納得できます。

ロンドン五輪の開会式には、僕やミッシェル監督ら英国の映画人はみんな驚いたよ。開会式の内容、特にエリザベス女王が参加することはトップシークレットだったんだ。僕やミッシェル監督は、ダニエル・クレイグとは何度も仕事をしていたけど、まったく気づかなかった(笑)。

エリザベス女王と007の共演は、世界中の人たちが驚き、また楽しんだよね。エリザベス女王自身も、楽しんでいることが伝わってきたし。それもあって、本作でも女王と007の共演シーンを紹介したんだ。エリザベス女王は、「みんなを楽しませよう」というショーマンシップの持ち主であることが分かるんじゃないかな。

ーー もしもエリザベス女王が劇映画に出演すれば、素晴らしい演技を披露しそうですね。

僕もそう思います。本作でもエリザベス女王が話題の映画のプレミア上映会にたびたび出席している様子を紹介しています。映画がお好きなのは確かでしょう。また、王女時代にノエル・カワードが主演・監督した戦争映画『軍旗の下に』(1942年)の撮影現場を訪ねているシーンなども本作にはあります。ただ映画が好きなだけでなく、どのようにして映画が製作されているのかも、エリザベス女王は理解していたようです。