Sep 17, 2019 interview

今泉力哉×三浦春馬、初タッグ作で「別の世界が現れた」「ここだけは引かなかった」シーン秘話を明かす

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なかなかプロポーズしない佐藤

――ところで佐藤と紗季のパートは共感しかなかったです!

今泉 知り合いの俳優さんで、9年くらい付き合っている彼女に結婚しようと思ってプロポーズしたら、その返事が「無理しなくていいよ」だったっていう話を、ちょうどこの作品の脚本を書いている時に聞いて、この映画っぽいなぁと思いました。9年越しのプロポーズで「無理しなくていいよ」って返されるっていう(笑)。いまは結局、結婚して子どももいるんですけど。

三浦 女性の方から「もうそろそろ…」みたいなシグナルを出すものでもないんですかね。

――紗季は出していなかったようにも思えました。監督のお知り合いの二人は結局何がきっかけで結婚したんでしょう?

今泉 その時よりも売れたからじゃないですかね。普通に結婚してあげてよって思って、もうこの二人は別れるしかないんじゃないのかと怖くなったり。

――怖いというのはなぜですか?

今泉 長く付き合って別れた後、次に付き合った人とはすぐ結婚しちゃうみたいな話がよくあるじゃないですか。その二人がそういうふうになっちゃいそうだと思ったんです。長く付き合った後に短期間で結婚するのって、たぶん長く付き合ったらどうなるかわかってしまっているからっていうのもあると思うんですよね。

三浦 そうかもしれないですね。

――よく結婚は勢いが大事って言ったりしますよね。

今泉 絶対その方がいいと思いますよ(笑)。

――佐藤もなかなかプロポーズしませんよね。

三浦 佐藤もいろいろ周りのことを考えてしまったり、というのがあったんですよね(笑)。タイミングが悪かったり。

今泉 目の前の相手より、まず周りを考えてはダメな状況だったのに、佐藤はそうしてしまうんだよね。

斉藤和義による主題歌&劇伴

――本作の主題歌『小さな夜』と劇伴を手掛けた斉藤和義さんの音楽についてもお伺いしたいです。

今泉 どうでしたか? 観ていて意外なところとか想像もしてなかった感じとかありましたか?

三浦 すべてが馴染んでいたように思いますし、劇中に出てくるストリートミュージシャンの斉藤さん(こだまたいち)が歌うしっとりしたメロディーが10年経っても変わらず寄り添い続けてくれるのが応援歌になっている感じがしました。(斉藤和義が歌う)エンディングでも、すべての方が足どり軽く劇場を去って行けるような、心の音色がワントーン高くなって、ピッチが上がるような、そんな期待感しかなかったです。

今泉 劇伴も全部斉藤さんが作ってくださっているんですけど、さっきの三浦さんの芝居と一緒で、想像していないことがたくさんあったんですよ。「ここはこういう曲だと思う」って話せるところもあれば、お任せ状態のシーンもあった。例えば、10年前から10年後にわたる時の佐藤が走るスローモーションのシーンはお任せだったんですね。俺の頭の中にあったのは、アコースティックギターとかでシンプルにくるだろうっていう想像だったんですけど、めちゃくちゃ打ち込みのサウンドで、まるで宇宙みたいな曲だった。

三浦 あー、そうですね。

今泉 最初は戸惑ったというか焦ったというか、このシーンってこういうことなの? と想像を超えてきて、マジか! みたいな(笑)。夜の空気とか、あのシーンでああいう雰囲気で音数が増えていって気持ちがだんだん盛り上がっていくっていうのは僕からの指示じゃなかったので、驚きとともに、盛り上げ方のひとつのアイデアだったんでしょうね。

三浦 そのシーンの映像を観ての打ち込みだったんですか?

今泉 そうです、そうです。

三浦 へぇー、おもしろい。その話、初めて聞いた。

今泉 ひとつの楽器でひとつの音の方向に作っていくシーンではないって判断をしてくれたからこそのあの打ち込みだったんだと思うんです。群像劇だし音もいろんな音数で表していくのは斉藤さんのアイデアだったと思います。