Apr 06, 2023 interview

紀里谷和明 監督&伊東蒼インタビュー "ひとりじゃない"という描写で想いを描いた『世界の終わりから』

A A
SHARE

紀里谷和明監督の最新作であり最後の作品『世界の終わりから』。肉親を亡くしひとりぼっちになった高校生【志門ハナ】が突如告げられる「世界の終わり」について。それを救えるのは自分の夢だと知った彼女の運命を描く壮大なSFファンタジーです。

主演は『空白』(公開:2021年)、『さがす』(公開:2022年)など印象的な演技を見せ、第77回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞した伊東蒼さん。今回は、原作、脚本、監督を務めた紀里谷和明さんと伊東蒼さんにお話を伺います。

―― まず紀里谷監督が、最初に映画を撮ろうと思われた理由を教えて下さい。

紀里谷:確か大学を卒業したばかりの頃、ニューヨークで“ドグマ95”シリーズの1つであるトマス・ヴィンターベア監督の『セレブレーション』(日本公開:1999年)を観たんです。この作品はセットを使わず、カメラは手持ち、人工的な照明は禁止という条件で撮影された異色ドラマでした。この映画を観た時に“これなら俺でも出来るかも”と思ったんです。それまでは《映画を撮る》にはお金が掛かる、カメラも16ミリや35ミリを使用するなど、凄くハードルが高いものだと思っていました。そんな時代でもありました。それで思い立って直ぐにニューヨークの演技を学ぶ学校に通いました。そこからですね、映画監督への可能性が見え始めたのは‥‥。カメラマンになる前の出来事です。

その後、カメラマンの仕事でミュージックビデオを撮ったり、色々とやっているうちに気が付いたら『CASSHERN』(公開:2004年)を撮影し始めた感じです。最初は“映画を撮りたい”という感じではなく、“撮れるかも?”という感じでしたから“映画監督になりたい ! ”という強い想いはなかったです。

―― 私は前作『The Little Star』(公開:2022年)も拝見しました。あの作品は台詞のない、アクション作品でした。今回、完全オリジナル作品を撮られていかがでしたか。

紀里谷:いつもオリジナルを撮っているつもりなんです。だから『CASSHERN』の時、「原作をほっぽらかして、何でオリジナルをやっているんだ」と怒られてしまったんですが‥‥。『GOEMON』(公開:2009年)もそうです。あの作品も石川五右衛門という歴史上の人物をなぞっていますが、完全創作の話です。

ただ今回はその下敷きすらない、“そもそも最初からこれをやっておけば良かった”と20年経って思っています。今、『CASSHERN』という題材に触れたことを後悔しているんです。あの時、オリジナルをやればよかったと思っています。