―― そうですか?『銀平町シネマブルース』では長回しも多く、クセの強い面白いベテランの皆さんとの共演で、今までと違う小出さんの演技を見た気がしました。【映画館支配人:梶原啓司】役の吹越満さんとの部屋の中での長回しシーンがとても印象に残っています。
あのシーンには、かなりリアルな空気が漂っていますね(笑)思い出すと、この映画はワンカットでワンシーンが、めちゃくちゃ多かったです。編集でほとんどつまんでない印象です。
―― 吹越さんとのやり取りでは“脚本にはどこまで描かれているの?”と気になりました。
吹越さんは、後輩の僕が言うのもおこがましいんですが、軸を崩すのが上手いんです。自分も役が身体に入っていたので吹越さんに着いていけたのと、アメリカでの演技の勉強のお陰で役として遊び合うことも出来るようになりました。でも、どこまで行ったら役が崩れるかの判断はできなかったので“そこは城定秀夫監督が判断してくれるから大丈夫”と思って監督を信じて演じていました。
―― 凄いですね。【ホームレス:佐藤伸夫】役の宇野祥平さんも独特の雰囲気が魅力ですし。
皆さん、それぞれ味わいが違うんです。皆さんとやり取りをする僕が演じる【さすらいの男:近藤猛】に関しては受けの演技の方なので、そのやり取りが楽しくもあり、大変でもありました。皆さん思い切って振りかぶって来るので、それが逆に良かったです。
宇野さんと吹越さんは演技のアプローチも全然違います。けれどお二人のシーンはお二人で成立している。お二人とも独特の哲学みたいな方法論を持っていらっしゃいます。演技を受けた時、特にそれぞれの違いを肌で感じました、面白かったですね。
―― 多くの役者さんが「受けの芝居をしっかり演じられるかが大事」と言われますよね。
大切ですよね。確か『孤狼の血 LEVEL2』(公開:2021年)の時に(鈴木)亮平が「(松坂)桃李がちゃんと受けてくれたから思い切って演じられた」と言っていたんです。それは立場が逆でも同じこと。真ん中の役者がドシッと構えてくれていたら思い切ってぶつかって行けるけど、真ん中の役者が迷っているように見えるとこちらも行きにくいというのは確かにあります。
だから真ん中で居るときはドシッと構えていたいと思います。今回も“真ん中でやる以上は皆が思い切って演じられるようにしないといけない”と思っていました。
―― そんな真ん中を務めた本作で共演者の皆さんとは、どんなお話をされたのですか。
撮影は結構バタバタしていたのですが、宇野さんとは本当に久しぶりにお会いすることが出来ました。また演技が出来るということが嬉しくて、宇野さんも懐かしんでくれました。
今は女優さんとして頑張っている【元女優:二ノ宮一果】役のさとうほなみちゃんとはバンド「ゲスの極み乙女」の時にちょっと会ったことがあったんです。この作品の撮影後に城定監督の作品で彼女が出演している『愛なのに』(公開:2022年)を観たのですが“かなり、肝っ玉座っている”とビックリしました。スゴいですよね。