Feb 23, 2022 interview

瀬戸康史インタビュー 相手を想う気持ちを自分の一部として演じる『愛なのに』

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『愛がなんだ』の今泉力哉監督とVシネ・ピンク映画界のトップランナーであり『アルプススタンドのはしの方』の城定秀夫監督が互いに書いた脚本を監督し合うR15+のラブストーリー『愛なのに』『猫は逃げた』が完成。そのうちの一本である城定秀夫監督(今泉力哉脚本)『愛なのに』は、結婚をテーマにした人間の複雑な感情からの行動を綴るラブコメディであり、愛に悩む人々の愛おしくも滑稽な姿が映し出されています。

軸となる古本屋の店主・多田には瀬戸康史、彼の想い人であり結婚を控える一花を演じるのはさとうほなみ、多田にプロポーズし続ける高校生に河合優実、そして一花のフィアンセに中島歩という顔合わせが実現。映画は、彼らの一方通行な想いに切なさを感じながら、“頭では分かっていても行動が伴わない”姿に笑わずにはいられないのです。今回は主演の瀬戸康史さんに俳優としての挑戦と今の思いを伺いました。

―― 私はこの映画を観た時に【愛の複雑さ】を感じました。

そうですね。“愛には色々な形がある”と今更ながら思いました。男女というジャンル分けだけでなく、色々な組み合わせがありますよね。【愛】って一言で簡単に言えるけど本当に複雑だなと思います。難しいんですが、多分、【愛】って信じることだと思います。相手を信じることが【愛】なんじゃないかと。

―― 映画のタイトルが【恋】ではなく『愛なのに』になっています。【恋】と【愛】は違うんですよね。

【恋】はわりと自己中心的で、僕の中では【愛】は相手を想う事という認識がありますね。

―― 今作は監督が城定秀夫監督、脚本を描かれたのが今泉力哉監督という面白いコラボレーションでしたが、その中でお仕事をされて新たな発見などありましたか。

ざっくりという言い方ですが、単館系の作品に僕が出るという事に驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。でも僕自身は「単館系の作品に出演しない」とも言っていませんし、これまで出演する機会がなかっただけなんです。今回挑戦してみて、良い意味でも悪い意味でも“映画っぽい芝居ってあるんだな”と思ったんです。

でも僕は「映画っぽくやればいい」にはなりたくなかったんです。どのお芝居でもそうですが、自分の心がどう動くかを信じて演じていきたいと思っていました。表面的な映画っぽい芝居には絶対になりたくなかったんです。でも今回この映画に参加して、そういう芝居もあるんだと気付きました。

―― 瀬戸さんの出演されている映画を立て続けに観させて頂いて、実は『劇場版ルパンの娘』(公開:2021年)はドラマっぽい、『コンフィデンスマンJP 英雄編』は少しステージ的な登場の仕方で楽しんでいたんです。その演技の分け方というか、距離感はどうやっているのですか。

自分の身体からどれくらい、何パーセントのオーラ&気持ちを出すか?どれくらい伝えたいか?みたいな感じです(笑)。この作品は簡単に言えば自分の気持ちをそんなに伝えなくていい、考えてもらう余白があっていい、そんな感じで演じていました。

―― 面白いですね。役者さんはそうやって空間によって演技の仕方、アプローチの仕方が変わるのですね。

だと思います。「~ぽい」というのが嫌だったんです。

―― 私もですが、観る側の人間は言いがちですよね。

僕自身も言っちゃうことあります(笑)。

―― 城定秀夫監督とのお仕事ではどんなことが印象的でしたか?

城定監督は凄く照れ屋さんなんですけど、監督自身が助監督と組んで、僕とさとうほなみさんに絡みのシーンの手本を見せたりするような大胆なところもあるんです。僕にとっては初めての経験だったので少し緊張していましたが、監督たちの姿を見て驚いたし、そんな監督が面白いと思いました。

それに役者のことを大事にしてくれるんです。僕らの動きを見て、現場でカット割りを決めてくれるんです。監督ご自身の考えもあると思うんですけれど、それをゴリ押しするのではなく、ちゃんとこちらの意見も尊重して考えてくれるのはとってもありがたかったですし、一緒に仕事がしやすい監督だと思いました。