ミニシアターや名画座を舞台にした映画を作ることは出来ないだろうか?そこに小出恵介、映画本格復帰主演作として生まれたのが『銀平町シネマブルース』。一文無しで行き場を失った近藤猛が、ホームレスの佐藤伸夫との出会いから名画座「銀平スカラ座」で住み込みのバイトを始める物語は、近藤の知られざる過去を浮き彫りにし、未来へと繋がる人間愛と映画館愛に満ちた作品です。
監督を務めるのは『愛なのに』『ビリーバーズ』他、多くの作品で人間の本質を描き続ける城定秀夫。更には『れいこいるか』など監督としても才能を輝かせる いまおかしんじ が脚本を担当する豪華な組み合わせが実現。そのほかのキャストには、吹越満、宇野祥平、人気ミュージシャン藤原さくら、日高七海、中島歩ほかベテランから若手まで顔を揃え、人間ドラマとしても秀逸な作品に。今回は、本作の主演、小出恵介さんをお迎えし、今作の撮影での話から自身の過去から“今”を見つめる話へとなりました。
―― 久しぶりに映画にご出演されていかがでしたか。
嬉しいですね。僕は『パッチギ!』(公開:2005年)で、この業界(芸能界)がスタートしたんです。だからこそ、そこからもう一度、映画の門を叩いているような感じがしています。
―― 最初が『パッチギ!』の井筒和幸監督、どんな経験になりましたか。
『パッチギ!』の存在は大きかったです。映画が凄いメディアであること、こんなにも苦労して、こんなにも多くの人が命をかけて映画を作っているんだという洗礼のようなものを全身で浴びた印象を持っています。
―― お休みの期間中、映画の観方は変りましたか。
しばらくニューヨークに行っていたのですが、色々な海外の作品を観ました。そこで新たに映画の可能性、演技の可能性や幅みたいなものを学べました。今までは日本の商業的な作品や自分が関わった作品での視点だったと思うんですが、海外で様々な国の映画を観ることで映画自体を引いた目で観ることが出来た気がしています。それが出来たことで自分としては、前よりも引き出しが増えたのではと思っています。
―― アメリカでもいろんな映画をご覧になったんですね。
ニューヨークに居る時にお世話になった語学学校の先生の中に映画好きの先生がいらして、その先生に「面白いアジア映画を見つけたから一緒に観に行こう」と誘われたりもしました。
その中で印象に残ったのが、韓国映画の『バーニング 劇場版』(公開:2018年)で、ニューヨークの映画館でも凄く人が入っていました。まだ『パラサイト 半地下の家族』(公開:2022年)が公開される前だったので、まだアジアブームではありませんでしたが、密かに映画通界隈では話題になっていました。
―― 韓国映画もそうですが、海外の作品を観ると演技のアプローチの仕方が日本と違う気がします。
海外の俳優さんの演技を観ていると、確かに違うように感じます。演技の学校にも行っていたのですが、教えていることも違います。メソッド演技(俳優の役としての気持ちの動かし方と、その方法)みたいなものを教えてもらいました。
役者自体のエゴとか“よく見せたい”みたいなものとは真逆な印象でした。役者は極端に言うと、全細胞、全筋肉、全脳みそを使って役を体現する装置であるという感覚で、役に対する捧げ方が日本とは違いました。
―― ということは、ニューヨークに行く前と後では、演技のアプローチの仕方が変わったりとか。
変わりましたね。自分の演技の幅ではありませんが、ひとつのストックというか、そういうアプローチ方法も得ることが出来ました。そのアプローチ方法が全作品で使えるかは別の話になりますが、自分としてはそういうアプローチの仕方が合いそうな作品の時は、このアプローチ方法を使って役に挑戦していきたいと思っています。
正直、まだ実感というか、上手くその学びで得たものが機能している感じは持てず、自分が思っているほど出来ていない気がしています・・・・。でも、これから少しずつでも出来ていけるよう、実感できるようになりたいと思っています。