Apr 13, 2017 interview

生きている人間は多面体である。大友啓史監督×神木隆之介が『3月のライオン』で生み出した新しくリアルな2.5次元の世界

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世代の異なる2人の青春の1冊は……。

 

──では最後の質問です。「otoCoto」では毎回、クリエイターのみなさんに最近読んで面白かった本や青春時代の愛読書をお聞きしています。お2人のお勧めの本、ご紹介ください。

大友 学生の頃は村上龍さんの小説をよく読んでいたかな。当時は村上春樹さんとW村上が大ブームだったけど、自分は龍派だったなぁ。沢木耕太郎さんのノンフィクション小説も好きで、よく読んでいました。中でも初期の作品で、カムバックを目指すボクサーを密着取材した『一瞬の夏』は忘れられない一冊ですね。神木くんは?

神木 僕の思い出の一冊は、山田詠美さんの『僕は勉強ができない』。初めて読んだのは中学生のときで、その後に高校に入ってからも読み直し、成人してからまた読み返したんです。読む度に、読む年齢によって印象が違ってくる小説です。何度も読み返すことができる本は、すごく大切ですよね。

 

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取材・文/長野辰次
撮影/名児耶洋

 

プロフィール

 

大友啓史(おおとも・けいし)

1966年岩手県出身。慶應大学卒業後、90年にNHKに入局。朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』、土曜ドラマ『ハゲタカ』、ドラマスペシャル『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』などのディレクターを務める。2011年にNHKを退局し、大友啓史事務所を設立。『るろうに剣心』シリーズのほか、『プラチナデータ』(13年)、『秘密 TOP OF SECRET』『ミュージアム』(ともに16年)と話題作を放ち続けている。

 

神木隆之介(かみき・りゅうのすけ)

1993年埼玉県出身。『劇場版SPEC』シリーズ、『桐島、部活やめるってよ』(12年)、『バクマン。』(15年)など次々と話題作に出演。大友監督の『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14年)では瀬田宗次郎役になりきり、原作ファンを唸らせた。『サマーウォーズ』(09年)や『君の名は。』などアニメ作品での声の出演にも定評がある。2017年8月4日には三池監督作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が公開待機中。

 

作品紹介

 

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映画『3月のライオン』

 前編は主人公・桐山零(神木隆之介)が棋士として生きていかなくてはならない境遇や零を取り巻く多彩な人々の紹介に時間が割かれたが、後編は零の棋士として、また人間的な成長ドラマとして、さらに家族再生の物語として大いに盛り上がりを見せる。
 新人王戦を制した零は、将棋連盟の計らいで棋士界の最高位に就く名人・宗谷冬司(加瀬亮)と初めて対戦。宗谷との初対局に、零は今までに感じたことのない緊張感と将棋の奥深さに触れることになる。一方、零が世話になっていた川本家の三姉妹も試練に見舞われる。次女のひなた(清原果耶)は中学校でイジメの標的となっていた。また、ずっと音信を絶っていた三姉妹の実の父親・川本誠二郎(伊勢谷友介)が川本家に突然現われ、復縁を求める。誠二郎は三姉妹の長女・あかり(倉科カナ)にとっては母親と自分たちを見捨てた無責任極まりない男。零はお人よしな三姉妹を守ろうと誠二郎の前に立ちはだかるが……。
 羽海野チカの原作コミックは現在も連載中のため、後編は原作にないオリジナルエピソードを盛り込みながら、映画版独自のフィナーレに向かって突き進んでいく。零にとって育ての親である幸田柾近(豊川悦司)はバラバラになった幸田家を再生することができるのか。病気の妻を抱える後藤正宗(伊藤英明)とそのことを知りながら後藤を想い続ける香子(有村架純)との関係はどうなるのか。それぞれのドラマが重要な局面を迎えることに。零、三姉妹、後藤、香子は最後にどんな一手を打つのか、怒濤の後編を見逃すことなかれ。

映画『3月のライオン』
原作:羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
監督:大友啓史
出演:神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮 前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也 尾上寛之 奥野瑛太 甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏 伊藤英明 豊川悦司
音楽:菅野琢磨
前編主題歌:ぼくのりりっくのぼうよみ『Be Noble』(コネクトーン)
後編主題歌:藤原さくら『春の歌』(スピードスターレコーズ)
配給:東宝=アスミック・エース

【前編】3月18日(土)【後編】4月22日(土)2部作連続・全国ロードショー

公式サイト:http://3lion-movie.com

©2017映画「3月のライオン」製作委員会

 

 

 

原作紹介

 

「3月のライオン」羽海野チカ/白泉社

美大生たちの青春を描いた『ハチミツとクローバー』で知られる漫画家・羽海野チカが2007年から連載を始めた人気コミック。プロ棋士の先崎学を監修に迎えた対局シーンはとてもリアルだが、下町で暮らす川本家三姉妹が零をもてなす食事シーンはファンタジックに描かれ、対局シーンとの激しいギャップが作品の魅力となっている。原作では零が通う高校の場面も多く、担任の林田先生以外とは言葉を交わす相手がいなかった零が放課後理科クラブで野口先輩たちと交流するエピソードは感動的だ。3巻以降には「先崎学のライオン将棋コラム」が各巻に掲載されており、『3月のライオン』に登場するキャラクターたちは棋士界の誰がモデルになっているかなどが分かり、より作品を楽しむことができる。現在12巻まで発売されており、独身の川本あかりをめぐってプロ棋士の島田開、林田先生ら男性陣が静かに恋の火花を散らしており、こちらも見逃せない。

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関連作品

 

-大友監督の愛読書

『一瞬の夏』沢木耕太郎/新潮社

1980〜90年代のバックパッカーたちのバイブルとなった『深夜特急』と並ぶ、ノンフィクション作家・沢木耕太郎の代表作。1982年に創設された新田次郎文学賞の第1回受賞作となった。一度は表舞台から去ったプロボクサーのカシアス内藤の復帰戦を、過去に内藤を取材した筆者は伝説の名トレーナーであるエディ・タウンゼントらと共にサポートすることに。従来のジャーナリストが取材対象とは距離を置いて客観的に記事を書くことに努めていたのに対し、気鋭の若手ノンフィクション作家だった筆者は、青春期の終わりを自覚しつつあった自身の夢を内藤のカムバックに託し、マッチメイカーとして伴走を続ける姿が感動を呼んだ。多くのスポーツ関係者、ジャーナリストたちに多大な影響を今なお与え続けている。

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-神木隆之介の愛読書

『ぼくは勉強ができない』山田詠美/文春文庫

主人公の時田秀美は17歳になる男子高校生。自由奔放なシングルマザーに育てられ、勉強はできないが、サッカーが大好きで女の子にはモテる。そんな秀美が年上の恋人・桃子さんとのセックス観の違いに戸惑い、コンドームを持ち歩くことを咎める教師に反発し、イノセントさを演出する同級生の美少女にイラついてしまう日常が綴られる。一般常識に囚われずに常に本音で語る秀美は、大人社会の欺瞞さに抵抗を覚える世代にとっては眩しい存在だ。直木賞作家・山田詠美にとっても秀美は思い入れの強いキャラクターであり、2015年に上梓した『賢者の愛』では編集者になった秀美を登場させている。

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