Aug 03, 2023 column

世界は変わった、君たちはどう生きるか? Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』

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そもそもゾンビとはそういうものだ

近年続く新型コロナウィルス感染症の影響で、全世界的に「パンデミック」「感染」というものが非常に身近なものとなった。少し前よりも、ゾンビ映画という世界が受け入れられやすくなっているのかもしれない。

ゾンビ映画の誕生は『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)。そして”ゾンビ映画”というジャンルを確立した作品は『ゾンビ』(1978)だとされる。共に手がけたのはジョージ・A・ロメロ監督だ。

ゾンビの父であるロメロ作品はホラーであると同時に、社会風刺も込められている。ゾンビ映画好きの方々にとっては、耳にタコ、釈迦に説法だが、このルールにきちんと則っているから、本作『ゾン100』は、エンタメ作品であって、紛れもなくゾンビ映画だと言える。

映画『ゾンビ』では、生前の行動習慣のなごりでゾンビがショッピングセンターに集まってくる。これは社会に何の疑問も持たず、ただメディアに煽られて過剰な消費行動をとり続ける人々への揶揄である。この作品は過剰な物質社会・消費社会への皮肉のほか、白人優位の人種差別に対する皮肉が込められており、当時の負の価値観をひっくり返した。

『ゾンビ』でいうショッピングセンターが、現代日本が舞台の『ゾン100』ではドン・キホーテではないか。

いつの時代もゾンビは現代社会のメタファーだ。ロメロは言った「ゾンビとは我々自身である」と。

飲み会の後に会社に戻って徹夜仕事、職場で頭を洗う日々。自宅はゴミ屋敷と化し、早朝誰もいない地下鉄のホームで、ふと飛び込みたくなる。会社、行きたくないけど行かなくちゃ‥‥。現代日本において、アキラのように思考停止した社畜ゾンビに陥った経験のある人は少なくないだろう。

劇中のセリフにあるように、本当にやりたいことは忘れていってしまう。しかし、明日も知らない世界では何が正解なんて誰にも分からないのだ。”〇〇すべき”に囚われていると、見たことがないものは見られず、したことがないことはできない。まず”〇〇したい”で語れ。やりたいことができたとき、すごく楽しいと思うはずだから。

聞き飽きた言葉かもしれない。新時代だといっても、ブラック企業は根絶していないし、パワハラ上司はいる。ただ、世界の見え方は、自分自身で変えられる。社畜が悪いとは言わない。あの経験があったから、今があるという人もいるだろう。しかし、経験は自分が一歩踏み出さないと得られない。思考を停止してはいけない。説教じみたことを言うのは、憚られる世の中にはなったけれど、当たり前のことは、いつだって変わらないのだ。

死を直面したとき、人生を振り返るやりたいことリスト系映画に『死ぬまでにしたい10のこと』(2002)や『最高の人生の見つけ方』(2007)などがあるが、そこまで大それた話じゃない。

どうせこの世界で生きていかなければならない、それなら少しでも”マシ”な生き方をしよう。ゾンビだらけの世界において彼らの底抜けにポジティブな姿勢は、明日の見えない現代社会で日々を送る我々に勇気と元気を与えてくれるはずだ。

あなたは自分の意志を持たない、ただの社畜ゾンビになっていないか? 本当はどうしたい? この夏、休みが2時間でもあったなら、『ゾン100』を観賞することをオススメする。

文 / 小倉靖史

作品情報
Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』

ブラック企業に勤める天道輝は連日の徹夜、上司のパワハラ、理不尽な仕事に憔悴し、「死んでいるように生きる」日々を過ごしていたが、ある朝、街はゾンビで溢れ、見慣れた景色はすっかり荒廃していた。それを目にしたアキラは持ち前のポジティブさを発揮し、「ゾンビになるまでにしたい100のこと」をリスト化。絶体絶命の状況の中で人生を謳歌する彼はやがて、仲間と共に更に大きな夢を求めて旅立つ。

監督:石田雄介

原作:麻生羽呂・高田康太郎「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」(小学館「サンデーGXコミックス」刊)

出演:赤楚衛二、白石麻衣、栁俊太郎、市川由衣、川﨑麻世、早見あかり、筧美和子、中田クルミ、ドロンズ石本、中村無何有、谷口翔太、佐戸井けん太、北村一輝

©️麻生羽呂・高田康太郎・小学館/ROBOT

Netflixにて世界独占配信中

公式サイト netflix.com/jp/title/81464329