Aug 20, 2020 column

09: グローバル視点でみるエンタメ業界の5つのビッグトレンド(1)

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業界のプロフェッショナルに、様々な視点でエンターテインメント分野の話を語っていただく本企画。日本のゲーム・エンターテインメント黎明期から活躍し現在も最前線で業務に携わる、エンタメ・ストラテジストの内海州史が、ゲーム業界を中心とする、デジタル・エンターテインメント業界の歴史や業界最新トレンドの話を語ります。

08 「ディズニー元CEO  アイズナーとアイガーが残したもの 」はこちら

前回まではプレイステーションやディズニー社での話を書いてきましたが、今回は最新のデジタルエンターテインメント業界における、業界競合間での5つのBig Trendをお届けします。

昨年の話になりますが、『アイアンマン』(2008)から10年以上に渡って展開してきたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズのフィナーレ作品『アベンジャーズ / エンドゲーム』(2019)が公開されました。

本作ではアベンジャーズと呼ばれるヒーローチームとや様々なヴィラン(悪役)が入り乱れ、人類の半数を失う大規模な争いが繰り広げられます。現在のデジタルエンターテインメント業界のビジネスシーンはこの映画のラストで繰り広げられた大規模戦闘シーンのような様相で、今までメインステージにいなかったグローバル企業を巻き込んだまさに“エンドゲーム”さながらの大規模戦争が起きているのです。この大乱闘を少し分析してみたところ、大きな5つの潮流が見えてきました。

第一の波:GAFAM+BAT

音楽、動画、ゲーム業界に共通する近年の特徴は、GAFA( Google / グーグル、Amazon / アマゾン、Facebook / フェイスブック、Apple / アップル、Microsoft / マイクロソフト)が大きく影響をもたらし、さらに近年は中国のBAT( ByteDance / バイトダンス・字節跳動、Alibaba / アリババ・阿里巴巴、Tencent / テンセント・騰訊 )もグローバル戦線に加わっていることです。

世界で有数のmarket cap (時価総額)とキャッシュを持ったプレイヤー達がエンターテインメント業界に熱視線を向けているのです。なお、通常であればBATの最初のBはBaidu / バイドゥ・百度なのですが、エンタメの場合はここが ByteDance / バイトダンスになるのが面白い所です。

音楽の世界では、アップルがiTunesとiPodで大きな変革をもたらしました。その後、アマゾンやグーグル、そして中国のテンセントとバイドゥも音楽業界に参入しメインプレイヤーの一員になっています。動画の世界でも、グーグルのYouTubeやアマゾンのPrime Videoの影響は従来型のハリウッドビジネスに大きな影響を与えており、個人向け動画ではYouTubeはもとより、アマゾン傘下のゲーマー動画サイトTwitchは米国の有力メディアに成長するほどになりました。

ゲームの世界では、任天堂、ソニー、そして後発組としてマイクロソフトがXBOXで業界参入し、数年前まではこの3社が主要な企業でした。しかし、早めに撤退するだろうと言われていたマイクロソフトが業績を大復活させたことにより、ゲーム事業に対して更に本気度を増してきており、グーグル、アマゾン、アップルまでもが本気でゲームのプラットフォーマーとして参入してきています。

彼らはプレイステーションのようなハードウェアを作るわけではなく、クラウドを使いストリーミングの技術を用いて、ウェブでインタラクティブにゲームプレイができるサービスを提供するのです。20年前にはネット環境やカルチャー的にもCDやDVDなどのパッケージを購入せず、ネットを通じて音楽や動画などのエンターテインメントをここまで楽しめる様になるなど想像できませんでした。