Aug 13, 2022 column

『ロッキーVSドラゴ:ROCKYⅣ』は新時代によみがえったアメリカン・ドリームである

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変わることができる新時代

スタローンが再編集に踏み切ったのには、親友アポロが壮絶な死を迎える『ロッキー4』がシリーズの分水嶺になっていることもあっただろう。

シリーズは第6作『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)で完結したが、その後も長い中断を経て、アポロの息子アドニス(マイケル・B・ジョーダン)を主人公にしたスピンオフの『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)、『クリード 炎の宿敵』(2018年)が作られている。アポロを正しく成仏させなければ、その死も浮かばれない。特に、『炎の宿敵』では、ドラゴとその妻が再登場し、アポロJr. VSドラゴJr.の対決の物語になっている。さらには『クリード3』の公開も控えている。

新生『ロッキー4』はアメリカでは2021年11月11日に一夜限りの特別公開という形でお披露目された。現在のところ、配信の予定もないらしい。それが日本では配給会社の尽力もあって、全国の劇場で公開だ。スタローンの本当の意味でのリベンジはここ日本でこそ果たされるということになる。

『ロッキーVSドラゴ:ROCKYⅣ』は新時代によみがえったアメリカン・ドリームである

さらに、『ロッキー4』にはもうひとつの意味合いも出ている。それは、米ソ関係の変化だ。冷戦は1985年、ソ連のゴルバチョフ書記長の登場によって、新しい局面を迎えた。89年には“パパブッシュ”ことジョージ・H・W・ブッシュ大統領とゴルバチョフ書記長によるマルタ会談によって冷戦は終結。その後はソ連崩壊を経て、ロシアとなったが、今年1月、ロシアのウクライナ侵攻によって、コールド・ウォーよりひどいホット・ウォーを迎えてしまった。冷戦時代はかろうじてあったスポーツ交流すらない。米露のアスリートは同じリングに立つことさえない。『ロッキー4』のロッキーVSドラゴの試合も現実世界ではファンタジーとなっている。この事実を、どう受け止めたらいいのだろうか。

しかし、きっとスタローンなら、劇中のロッキー同様、こういうのではないだろうか。「それでも変わることができる」と。スタローン自身も変わった。『ロッキー4』も変わった。観客も、新たな視点でこのアメリカン・ドリームの物語を体感することになる。

文 / 平辻哲也

作品情報
『ロッキーVSドラゴ:ROCKYⅣ』は新時代によみがえったアメリカン・ドリームである
映画『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』

王者アポロ・クリードとの戦いを経て、チャンピオンとなったロッキー・バルボアの前にソ連から“殺人マシーン”イワン・ドラゴが現れる。ドラゴとの激戦によって、ライバルであり親友のアポロを失ったロッキーは、対ドラゴ戦のため、ソ連へ乗り込むが‥‥。

監督・脚本:シルべスター・スタローン

出演:シルべスター・スタローン、ドルフ・ラングレン、タリア・シャイア、カール・ウェザース、ブリジット・ニールセン、バート・ヤングジェームズ・ブラウン、トニー・バートン、マイケル・パタキ、ロバート・ドーンニック、ストゥ・ネイハン

配給:カルチャヴィル / ガイエ

© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

2022年8月19日(金) 全国公開

公式サイト culture-ville.jp/rocky4