Aug 13, 2022 column

『ロッキーVSドラゴ:ROCKYⅣ』は新時代によみがえったアメリカン・ドリームである

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大ヒット映画のトホホな部分

『ロッキー4』は、成功者となったロッキーが、194センチ、118キロのソ連最強アマチュアボクサー、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)に挑む物語。前作までにしっかりと固い友情で結ばれたアポロ・クリード(カール・ウェザース)は、エキシビジョンマッチでドラゴに破れたどころか、命まで落としてしまう。ロッキーはアポロの想いも背負い、今までのキャリアを投げ売って、ドラゴと闘うためにソ連に渡っていく。

かなり古い作品なので、この際ネタバレまで書く(※読みたくない人は読み飛ばしてください)。ロッキーは雪の中でのトレーニングの末、ドラゴと対決。試合では最初はブーイングが飛び交うが、打たれても打たれても決して諦めない姿に、ソ連の観衆も拍手を送るようになり、形成逆転。見事に勝利した後は、観衆を相手に「誰でも人は変われるのだ」と演説し、大団円を迎える。

当時は米ソの冷戦時代。こうした時代背景をエンターテインメントに織り込んだことで、愛国心に燃えるアメリカ人のハートをわしづかみにした。全世界興収約3億ドル(約404億7675万円)、北米約1億2780万ドル(約172億4309万円)の大ヒット。北米では『ランボー/怒りの脱出』と同じ1985年に公開されたが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ランボー/怒りの脱出』に続き、『ロッキー4』が3位にランクインした。

日本では翌86年6月に公開。1986年の日本配給収入トップ10では、『子猫物語』(54億円)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(36億5000万円)に続く配給収入29億8000万円の3位にランクイン。スタローンは自身のキャリアハイを迎え、当時の言葉で言えば、「ドル箱スター」のトップだった。

しかし、本作には酷評の声も多かった。最低映画を選ぶ「ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)」では、『ロッキー4/炎の友情』は『ランボー/怒りの脱出』の評価とも合わせて、8部門(作品賞、男優賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞、脚本賞、新人賞、作曲賞)にノミネートされ、監督賞・男優賞(スタローン)、助演女優賞・新人賞(ブリジット・ニールセン)、音楽賞を受賞した。人気が出れば、叩かれるのは世の常だが、人気と批評家の評価にこれだけギャップがある作品はそうは多くないだろう。

確かにトホホな点も多い。“人の生き死に”を扱っておきながら、一方では無駄なコメディー・パートもある。特にひどいのは、ナゾの家事ロボットとロッキーやアポロのやりとりだ。ここはほとんど意味なく、当時のトレンドへの乗っかりと箸休めのような笑いのために存在する。

最も酷評を受けたブリジット・ニールセンはドラゴの冷徹な妻役。ヒロインアクション『レッドソニア』でデビューしたデンマーク出身のトップモデルだが、スタローンとはプライベートでも親密になり、一時は結婚した仲。『ロッキー4』の演技も決して褒めれられたものではないが、プライベートな話題もあいまって、やっかまれた面も否定できない。