Aug 13, 2022 column

『ロッキーVSドラゴ:ROCKYⅣ』は新時代によみがえったアメリカン・ドリームである

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シンプルになった人間ドラマ

スタローンは長年、本作の出来栄えには後悔の念を持っていたそうだ。「あの頃の俺は、今よりかなり薄っぺらだったんだ」と弁明している。その機会がやってきたのは2020年春のコロナ禍だった。ロックダウンを機に、ロサンゼルスのスタジオで再編集に取り組んだ。何百時間をかけて、本編や未使用カットを見直し、新たな物語を構築した。未公開シーンは42分。91分だったオリジナルは94分の長さになった。なんと半分近くが差し替えられたのだ。

新生「ROCKYⅣ」はその珍場面をバッサリ切って、ロッキーとアポロの友情とその伏線に焦点を当てた。追加されたのはアポロがロッキーとその妻エイドリアン(タリア・シャイア)にドラゴと戦う計画を話すもの、エイドリアンが、アポロがドラゴと戦うことに心配そうにするもの、葬儀でのデュークの弔事、ロッキーの男泣き‥‥。冒頭からドラマ部分の多くが差し替えられ、よりシンプルにキレも出ている。スタローンが「これはボクシングの試合の映画じゃないんだ。人間ドラマなんだ」と強調するとおりの作品になっている。

しかも、うれしいオマケもつく。もともとフィルム作品だったものを4Kリマスター&ワイドスクリーン(2.39:1)、5.1chチャンネルサラウンドにアップグレード。画面サイズは横に広がり、音響もより細やかに立体的になっている。中盤のヤマ場である「アポロVSドラゴ」のエキシビジョン前には、ジェームズ・ブラウンが高らかに「Living in America」を歌い、試合シーンの音の迫力も増しているようだ。