Sep 12, 2020 column

『空の青さを知る人よ』で思い出す、かつて僕らが見た空の色

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監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀。原作:超平和バスターズ。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(『あの花』)、『心が叫びたがってるんだ。』(『ここさけ』)のメインスタッフによる作品で、同じ秩父を舞台とした本作は「秩父3部作」の3作目となる。3部作と言っても物語や人物の繋がりはない。同じ秩父を舞台とした青春物であるということだけが共通点だが、3作を通すと『あの花』は少年期と青春期を繋ぐ物語。『ここさけ』は青春期まっただ中の物語。『空の青さを知る人よ』は青春期と大人の時期を繋ぐ物語というように成長の時間をなぞっており、3部作となったことでテーマ的な道筋が繋がっている。

『空の青さを知る人よ』

自分が立つ場所への希求は3作全てに共通しているが、大人の時期をも描く本作ではこれまでの10代主人公が描いてきた「これからにどういう夢を想い描き、望むのか」だけでなく、“over30”世代の「かつて夢見た場所に自分は立っているのか」「これからをどうするのか」が描かれ、その2つの世代の葛藤がぶつかるドラマは大人になった人たちにこそグサグサと突き刺さってくる。もちろん、若い人たちにとってはあおいや高校生のしんのの心情の方が共感できるだろうが、観客がどのキャラクターに感情移入するのかで作品自体の見え方も感想もが個々で変わるのが面白い部分だ。

『空の青さを知る人よ』

同スタッフによるこの3作はどれも大好きだったが、個人的にはその中でもこの『空の青さを知る人よ』が一番心に刺さった。“青春もの”であるのでそのまっただ中にいる若い人はもちろん、青春期が終わってしまった大人だからこそ見る意味がある“青春もの”だ。

岡田麿里の脚本らしく面白いセリフが随所にちりばめられた作品ではあるが、同時にこの作品は言葉では語らない部分でも多くの、それは表面上のものとは異なることを伝えてくる。

『空の青さを知る人よ』

劇場公開からほぼ1年。配信開始からも1ヶ月以上たっているので若干ネタバレを含むことを書くが、例えばあおいは姉あかねに対し「自分のせいでこの土地に縛られたかわいそうな人」という思い込みをもっている。あかねがそう思われていることに対しどう思っているのかは語られない。しかし注目したいのはあかねが乗っている車がマニュアル(MT)の4WDということ。あかねはおっとりとした人物として描かれているが、こういう車に乗っていることを描くことによって、「おっとりしているけど実は行動的な人物で、あおいが閉塞を感じるあの地での生活をそれなりに楽しんでいる」ことを見せている。「自分のせいでこの土地に縛られたかわいそうな人」というあおいの姉への勝手な印象の静かな否定だ。そういった小さな表現に気づくだけで、それぞれのキャラクターの言葉では語られない心象や視点といったものが観客にも見えてくる。