1つは、簡単に書けば「番組」ではなく「コンテンツ」としての需要や重要性が高まったこと。この流れを生み出しているのは書くまでもなく配信の本格化や国外への販売になる。大予算を投じ3年がかりの一大プロジェクトであったファンタジー小説『精霊の守り人』の実写ドラマ化も海外販売を前提にしたものだ。 さらに将来の映像技術や方式への先行投資や挑戦という面もある。たとえばBS4Kスタートに合わせて放送された目玉企画の1つである『ウルトラQ』4Kリマスター版の放送や、先日発表されたSFアニメ『シドニアの騎士』のシリーズ全話4Kリマスター版制作と放送など。これらは「4K版が放送される」「『シドニアの騎士』がNHKで放送される」こと以上に「コンテンツの先を見据えて4Kリマスター版を制作する」ことに大きな意味がある。映画でも大きな話題となった『2001年宇宙の旅』8Kリマスター版もそうで、日本において放送技術を牽引しているのが実質的にNHKであるので、これらはむしろNHKが率先して行う分野だ。
もう1つはサブカルチャーを評価することの役割や責任だ。コンテンツとして残すことは出来ても、放置しておけば「なぜそのコンテンツが登場したのか」「どのような意味があったのか」は途絶えてしまう。ほんの2、30年前の社会の話であってもこういうことが起こっていることを考えたらむしろこの面の方が重要で、すなわちそれは歴史を伝え残すという役割と責任だ。 かつての放送番組の基本は(これはNHKに限らず民放も)“ナマモノ”でOAが全てだった。が、いまやオンデマンドで過去番組を見ることも可能となり、「放送とはOA」という前提自体が失われつつある。これによりTV番組はある種のアーカイブ性も内包するようになった。これを考えたとき、評にまつわる番組というのは、TV番組を専門ムックなどと同価値のものとすることも可能にしたということになる。「マス化→薄味にする」である民放のアニメ特番をアーカイブ化しても大して意味もないし資料性も発生しないが、前述したようなNHKが繰り広げてきている“濃い”番組であれば別だ。
歴史や事件、災害などにまつわる番組のアーカイブ化は以前より行われてきている。この20年ほどで強化されつつあるサブカルチャーにまつわる番組の強化が、将来的にどのような意義を持っていくことになるのかはまだ見えない部分も多い。ただ、資料性やアーカイブの使い方というものは、後の人たちがその情報をどう受け取りどう活用するのか?でもあるので、それは僕らの側の課題でもあるのだろう。
最後に。3月下旬のNHK BSアニメのラインナップが、これまたアニメファンにはたまらない物になっており、「春休み中とはいえ、攻めてくるなあ…」という感じだ。 『ここさけ』や『ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』といった話題作が目を引くが、個人的には『夜は短し歩けよ乙女』も強くオススメしたい。ホントに面白いのだ、この作品。
文 / 岡野勇(オタク放送作家)