Dec 05, 2018 column

メジャーアニメ制作会社の譲渡に感じる、日本コンテンツ文化・産業の未来

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IGポート傘下であった「ジーベック」の映像制作事業がサンライズに譲渡されるというニュースが発表されたのは11月20日のことだ。

サンライズのプレスリリース: http://www.sunrise-inc.co.jp/news/news.php?id=16235

IGポートは『攻殻機動隊』シリーズ、『PSYCHO-PASS サイコパス』など多くのヒット作を手がけるアニメスタジオProduction I.Gの親会社。サンライズは『ガンダム』シリーズをはじめとしたこれまた数多くのヒット作を生み出している大手アニメ制作会社で、ジーベックのアニメ制作事業は来春よりサンライズが設立する新会社に事業が継承される予定とのことだ。

アニメのみならず映像制作会社やスタジオの母体が代わることはそれほど珍しいことではない。しかし、今回少々驚いたのはそれがジーベックというアニメファンには名の知られたメジャーであったことだ。90年代の『機動戦艦ナデシコ』をはじめ『蒼穹のファフナー』シリーズや、近年でも70年代に一大ブームを巻き起こした『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク作『宇宙戦艦ヤマト2199』、その続編である『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』といったヒット作・人気作を手がけている。 まして『宇宙戦艦ヤマト2022』は劇場上映とTV放送が行われているさなかであるし、TV作品でも今春期に『フルメタル・パニック!』の13年ぶりとなる第4期『フルメタル・パニック! Invisible Victory』が放送されたばかりだ。僕のように一般視聴者であるアニメファンからすれば「数多くのヒット作を持つ会社」に映っているし順調なのだと思っていた。アニメをふくめコンテンツ産業では「版権(権利)を持っているところは強い」と言われる。そしてジーベックが手がけた作品には自社のオリジナル作品も多い。それでも事業譲渡の理由が「版権事業の収益をしても映像制作事業の長期化した赤字の補填が出来なくなった」という発表にはそれなりの衝撃を感じてしまう。

もちろん、現在主流である製作委員会方式の中で同社がどのようにどれだけの版権収益が得られる形となっていたのかは作品によっても異なるであろうし、外部からはわからないが、「とはいえ…」という印象だ。アニメーション制作環境の厳しさは、昨今様々なメディアでも取り上げられるようになっている問題であり課題だ。その中、幾多のヒット作があり、名が知られているようなスタジオであっても赤字であるというのは、その制作現場の人たちも潤っているとは思えないことが想像できる。 幸いにも、あくまでサンライズへの映像制作事業の譲渡であり、同事業が無くなるわけではない。同業の大手から大手へなので、突如市場に参入してきた異業種傘下になるようなパターンとも異なるし、この数年間に何度も目にした「どこそこが倒産しました」というケースとは大きく異なる。『ヤマト2022』もクライマックスに向けて制作は続行中だ。僕もその1人だが、ジーベックが生み出してきた作品には根強いファンがいる作品は多い。新体制で作られる作品に期待していきたい。