公式のアナウンスによれば、「Figure-rise LABOはキャラクターありきのシリーズ(製品)ではなく、(技術の)研究テーマがあって、それにふさわしいキャラクターを製品化していこうというシリーズ(製品)になる」とのことだ。次回作は「髪の毛の微妙なグラデーションを成形段階レベルで再現する」ことをテーマとした『初音ミク』の製品化が予定されている。 プラモデルというマスプロダクツ。それも大手メーカーが、そのような“研究”を企画コンセプトとした製品を出すこと自体が珍しく意外にも思える。だが「すぐにそれが何かに応用できるかはわからないが、可能な技術の可能性を模索する」。これはホビー分野に限らず、余力がある企業でなければ出来ないことだ。そして産業全体を見たときにとても重要なことでもある。これが出来なくなってしまった、あるいはしなくなってしまった結果、かつては栄華を誇った幾多のメーカーが凋落してきた様を、この数年で僕らは何度もニュースで目にしてきた。地道に研究に資金をつぎ込んできた海外の事業が、気がついたら追い抜いていく様も数多く見てきている。 ノウハウの蓄積がどこで活きてくるのかは別の話になる。すぐさま莫大な利益を生むものでもないだろう。だが先を見据える技術というのはこういうことなのではないだろうか。 『Figure-rise LABO ホシノ・フミナ』はこれまでのバンダイの高い技術が数多く投入されている。「美少女プラモ」というジャンルから見誤られるが、模型工業技術において現時点での世界最高峰の1つだと言ってもいい製品だ。バンダイは静岡工場を中心とした日本国内での製品生産にこだわってきているが、これは美少女フィギュアの形をした”MADE IN JAPAN”の理念そのものの偶像化だとも言える。
が、主だったショップも通販サイトも予約開始と同時に瞬殺。発売が開始されたもののほとんどのホビーショップは即完売か、当日店頭販売分がないという有様で、現在は入手難だ。とはいえ、再生産・増産が難しい完成品フィギュアとは異なり、そもそもが再生産が容易であるのがプラモデルの強みであり、そのためのプラモデルとしてのこの製品。しばらくすればまた出荷されるので、置き場所の準備などしつつ待つことにしよう。
文 / 岡野勇(オタク放送作家)