4月期に入りアニメ新番組『ガンダムビルドダイバーズ』が始まった。
『ガンダムビルドファイターズ』(13)、その続編『ガンダムビルドファイターズトライ』(14)につづく『ガンダムビルドシリーズ』の新作だが、今作では世界観が一新されストーリー上の繋がりはなくなっている。『ガンダムビルドシリーズ』というのはガンプラを題材としている作品で、独自の改造をしたガンプラを使い、作中の特殊な技術によって仮想バトル(ガンプラバトル)を繰り広げるというもの。80年代に子どもだった世代には「『プラモ狂四郎』のような作品」と言えば、なるほどと思う方もいるだろう。
『プラモ狂四郎』に熱中した世代の中には、登場する『パーフェクトガンダム』などを実際に作ろうと改造にチャレンジした人もいるのではないだろうか。だが、その工作の難しさから諦めた人も多いはずだ。「組み合わせたり、さらにキレイに色を塗って仕上げたり」というのは子供にとってはそれなりのハードルだったからだ。 そういった過去を思い出しつつ大人の視点で『ガンダムビルドシリーズ』を見ると、そこにはホビー系キャラクター商品としては鉄板と思われているガンプラの、若年層のハードルをいかに下げるかという市場戦略の変化がはっきり見えてくる。
過去数十年にわたり、日本の模型市場においてガンプラは最大のシェアを持つジャンルだ。
同時に、シェアが大きいからこその課題が常につきまとっている。減少していく模型人口とファンの高齢化の中で、業界全体が直面し続けてきた「裾野(新規模型ファン)をどう広げ、どう維持していくのか?」という命題。それはそのまま「作る際のストレスをいかに下げるか」という技術上の課題にも繋がってきた。ストレスがあっては「やっぱりプラモは面倒だ」と思われてしまう。しかし、ストレスは下げてもクオリティは下げるわけにはいかない。簡素化をすればいいわけでもないのだ。模型は完成してこそ!と考えれば、この課題はキットに関することだけではなく、塗装を含めた「仕上げ工作」も含まれる。小学生の購入者もいるガンプラではその課題はとりわけ大きい。
組み立てストレスの軽減については、ガンプラは早い時期から接着剤を使わずにすむスナップフィットの技術を取り入れてきた。主要パーツがあらかじめ色分けされている“色プラ”もそうだ。不足している色はシールで対応する。これによってかなり組み立てやすくなり若年層も手を出しやすくなった。だがそれはあくまで「ガンプラという大枠においての話」だった。『ビルドファイターズ』の関連ガンプラが出始めたときに驚いたのは、そういった技術面からさらに踏み込んだ「見事な企画開発だ」ということだ。
その企画開発をするためにアニメが実に上手く機能をした。そのままであれば売れる数の少ないちょっと以前のガンプラ(それも主役メカではない脇役メカなど)が、作中の改造を再現した新規パーツを入れてリニューアルすることで新たな製品になる。 同じ作品内でありながら作中のメカデザインもバラエティに富んでいる。とにかくカッコヨサを追求したケレンミたっぷりなMSもあれば、中にはアッガイをかわいらしいクマのようにアレンジした『ベアッガイ』といったファンシーな物もある。さらには同じガンプラとしてZガンダムとSDガンダムも一緒に登場する。 しかもカスタマイズが売りの作品であるので、他のガンプラや別売りのアップデートパーツも組み合わせれば初心者モデラーであっても簡単に改造ができ、「自分だけのオリジナルMS」を作れる。プレイバリューの高さから改造のための別売りパーツも相乗的に売れるわけだ。実際、僕もこの数年で買ったガンプラは『ビルドシリーズ』系のものの方が多い。