Mar 28, 2018 column

アニメが開く新たな扉 趣味アニメが成功する理由はなんだろう?

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アウトドアレジャーではなく、ホビースポーツを題材とする作品もある。最たるものが自転車だ。ここ10数年ほどの自転車(スポーツサイクル)ブームの中で、いくつかの自転車を題材としたコミック・アニメが登場し、近年では『弱虫ペダル』(渡辺航・著)のアニメ化における爆発的な人気は記憶に新しい。女性ファンが多くついたことも注目をされたが、その中には実際にロードレーサーを購入しヒルクライムレースに参加する人らも現れた。

自転車アニメでは、昨年放送された三宅大志原作コミックのアニメ化『ろんぐらいだぁす!』も、その趣味の魅力を上手く伝えてきた作品だ。自転車が好きな女の子4人組を主人公に、こちらはホビーとして楽しむファンライド(街乗りや長距離サイクリング)を主体として描いている。主に東京西部から神奈川エリア付近を舞台に実際に存在する風景やルートを見せつつ、身近な自転車の楽しみかたをかなり細かく描いている。アニメファンの中でも自転車趣味がある人には好評だった作品だ。 自転車の種類によってどう違うか。長距離を走るコツ。最低限どんな技術や知識や装備があればいいか。門外漢にもわかりやすく、自転車趣味をやってる人間が見ても「あるある」情報が随所にある。

アウトドアにホビースポーツ、これらはジャンル内人口がある一定はあるものの、爆発的に増えるというものでもない。近年では若い新規層の増加が頭打ちになっているような分野も多い。(僕の趣味のひとつであるオートバイなどは、用品店に行っても客が中高年ばかりでちょっと愕然とさせられる。若い人がほんとに少ないのだ) もちろん、それらのジャンルには新規層の囲い入れに熱心な人々もいるのだが、なかなか増えないというのが現実だ。

そうした現実のなか、先に挙げたようないくつかのアニメ作品とその反応を見ていると、「興味がなかった人を振り向かせる」という現象は本当に何かの拍子にふと発生するのだということに驚かされる。

ではその“何かの拍子”を生み出すものはなんなのだろう? こういったホビー題材作品に共通するのは、“ジャンル”自体がもう1つの主役であることだ。たとえばキャンプそのもの、登山そのもの、ファンライドそのもの。そうした形無きものがただの行為やイベントというだけではなく主役でもある。

でも人間であるなら見た目や服装や話し方などでキャラクター性を演出できるが、形の無い“ジャンル”をどうすればキャラクター性のある主役に出来るのだろう?