Mar 28, 2018 column

アニメが開く新たな扉 趣味アニメが成功する理由はなんだろう?

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過ごしやすい季節となってきた。根性が無いので真冬の間はバイクにも乗らず、おかげで今冬だけで1回、バッテリーが上がってしまった。ようやくちょっとはどこかに出かけようかという気にもなってくる時期だ。

アニメファンをいまだに「部屋の中に引きこもっているだけ」というステレオタイプな像として描くメディアや作品は多い。特に非アニメファン向けのバラエティや情報番組では顕著だ。だが実際のところは、多くの人が思っている以上にアウトドア派やスポーツ好きもいる。年配層だとバイク趣味がある人も多かったりする。

一方、それまでは興味はなかったが何かのアニメ作品に出会ったことで興味を持ち、新たな趣味のジャンルへの扉が開くこともある。近年のアニメではそういう訴求力のある作品がちょっとしたトレンドともなりつつある。いくつかの主立った作品を挙げてみたい。

今18年1月期から放送して人気となっていたのが『ゆるキャン△』だ。(http://yurucamp.jp/

あfろ氏によるコミックのアニメ化作品で、作品が題材としているのはキャンプ。「ゆる」は「ゆるゆる」。「キャン」は「キャンプ」。『△』はテントを表している記号で発音はしない。 キャンプではあるがガチでハードなアウトドア物では無く、野外キャンプが好きな女子高生たちを主人公にしたいわゆる“日常系”とよばれるジャンルになる。タイトル通りゆるいのが特徴で、お手軽調理などをふくめた敷居が高くはないキャンプが描かれる。 とはいっても描写はお手軽(いい加減)ではないのがポイントだ。1人で行くソロキャンプ、皆で行くキャンプ。それぞれを描きながら、道具の紹介やテントの設営。アウトドア調理技…などなどが丁寧に描かれている。ソロキャンプ好きの友人は、原作からして好きとのことで、やはりツボを突いている描写や情報が多いようだ。 舞台となっているのは山梨県周辺、時にそこから長野方面のキャンプ場にも足が延ばされ、作中に登場するルートやキャンプ場や風景にはいずれも実際のモチーフがあるのも見ていて楽しい。

アウトドアアニメというジャンルが注目されたのは、おそらく13年にアニメ化された『ヤマノススメ』になるだろう。しろ氏による人気コミックが原作で、女子高生たちによる登山を題材とした作品だ。 第1期は発行元による自社製作作品、5分枠のショートアニメとして放送された。好評を受けて14年に第2期となる『セカンドシーズン』が放送。この作品からは1話15分の2クール作品となった。 見始めたら登山には興味がない僕でも面白い作品だった。第1期ではちょっとしたキッカケから登山を始めた主人公による、身近な(小学生が遠足で行くような)山の登山やトレッキングが描かれ、彼女の前に新たな世界が開けていくさまが心地よい。第2期はそういった楽しさだけではなく山の険しさについても踏み込んでおり、中盤ではついに富士山に挑むことが見せ場となるのだが、この展開は少々涙を誘うことになる。 昨年末には短編の劇場イベント上映を経て、現在TV第3期『ヤマノススメ サードシーズン』が今夏から放送されることがアナウンスされている。(http://www.yamanosusume.com/

山ガールという言葉が知られるようになって数年がたつが、この作品がきっかけで登山を始めてみたアニメファンも少なからずいるようだ。