May 06, 2017 column

今クールのアニメは手書き、セルルックCGともに意欲作が目白押し!今から追いつく作品レビュー

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その第2シリーズの今作も総作画監督の恩田尚之をはじめそうそうたる名前が並び、アニメファンはキャラクターの動きを見ているだけでも満足してしまいそうになる。 加えて書くと、この作品では大河ドラマ『功名が辻』をはじめ、幾多の人気ドラマを手がけてきたベテラン大石静が初のアニメ脚本を手がけていることも見逃せない。ゲーム原作と言っても、アニメのストーリーはオリジナルだ。ドラマ界のベテランが、それまでのドラマ作品とは全く異なるファンタジーをどう描くのか。すでに序盤だけでも一筋縄ではいきそうにない雰囲気が物語に漂っている。こういう部分もドラマファンであれば注目してみるのもいいだろう。

手描きの良さと言えば、『月がきれい』(https://tsukigakirei.jp/)も今期のアニメの中で僕が好きな作品だ。原作なし、オリジナルの作品で、思春期まっただ中の中学生たちを主人公とした、すごくゆっくりと距離が縮まっていく恋の話だ。 彼らのちょっとしたことが起こる日常の空気感や、世界観そのものが持つ柔らかさを、手描きで描かれたイラスト調のアニメーションが大きく引き立てている。 毎回、心にじわっと心地よいものが伝わってくる作品だが、その心地よさにこの手描きが生み出す温度があることは間違いない。埼玉県川越市の実際に存在している風景もあり、一見すれば「実写でできるのでは?」と思う人もいそうだが、このじわっと染みてくる感覚はアニメ、それも手描きの映像だからこそ描けているものだ。

フルCGやセルルックCGはもはや目新しい技術でも、表現手段として模索のものでもなくなってきた。しかしそれは、決してデジタルが占めてきてきたというわけでも、デジタルに取って代わられる時代が始まったわけでも無い。 ストレートなCG作品の面白さが楽しめる作品、人が生み出す手描きの気持ちよさが楽しめる作品、部分的に3Dを使う・手描きを使うといったハイブリッドな表現が生む可能性。これら全てが並んでいるのが今のTVアニメであり、日本のアニメが誇れる部分でもある。

世界アニメ界の巨人であるディズニーは、CG作品を主力とするべく、数年前に手描きのアニメーターを大量に解雇した。極端な方針に危機感を持ったジョン・ラセターがかつての2Dアニメ時代のスタッフを呼び戻し制作した劇場長編が『プリンセスと魔法のキス』(09)だが、2D長編は『くまのプーさん』(11)以後の新作がなかなか作られず、ほぼ毎年のように新作が製作される3DCG作品と比べると縮小傾向は否めない。一度失われてしまった技術を取り戻すことはとてつもなく難しい。

デジタルとアナログというのはとかく対立構造で語られることも多く、「デジタル技術に駆逐されるアナログ」という論調はあらゆる分野で見かける物だ。だが対立しているのでも、どちらが優れているのでも無く、あくまでもそれぞれの技術であり技法であり手段だ。課題はそれぞれの利点を上手く活かせるのかどうかになる。これは社会全体のあらゆる分野におけることだろう。 今、アニメを見ていて面白いのは、その模索や回答の導き方が、映像で見えることだ。日々変化し進歩していくこれらの技術が、これからどのようになっていくのか。注目し続けていきたい。もしかしたら、数年後にはいま世を席巻している3DCGですら古いものになっているのかもしれないのだ。

もちろん今回挙げた以外にも、話題作注目作は多い。「でも、もうシーズン中盤あたりまで来ちゃってるんでしょう?!」といっても、今では配信によって追いかけて見られるようになってきた。多くの作品は公式サイトで配信についてもアナウンスをしているので、評判をたよりにそれらに目を通してみるのも良いだろう。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)