僕は、とにかくあまりにも大きな隙間の広さが魅力に繋がったのだと思う。他のアニメのように、大人が見てそのまま楽しめる作品とはちょっと違う。 全般的にユルすぎの隙間だらけで、そのユルすぎている部分や隙間を視聴者がどう楽しむか?みたいな感じだ。僕はなんとなく、ブロック玩具を渡されたときのような印象を受けている。それで何を組んでどう楽しむのかはこちら次第。なので、視聴者の方が積極的に楽しむつもりで見ないと乗りきれない作品であるかもしれない。
ただ、そういうことや、多くの人がやっているストーリーに隠された考察やら、「たのしー!」「わーい」といった言葉の流通だとか以上に、個人的に「すごーい!」と思い楽しんでいるのは、誰もが全くのノーマークだったところからこういう状況がいきなり爆発したという、その意外性というか。誰も予期していなかったことが起こる、その面白さだ。放送というリアルタイムイベントで起こる、まさにライブ感そのもの。 ほんとに誰もがノーマークの作品だった。「放送前から俺はこの人気を予期していた」などと言う人がいたら間違いなく嘘つきかペテン師だ。
制作サイドの人も反応の大きさへの困惑をSNSで発していたが、ほんとにこうなることは全く予想していなかったどころか、期待もしていなかったのではないかと思われる。 それは展開の足並みの悪さからも窺える。『けものフレンズ』はソーシャルゲーム、雑誌でのマンガ版連載、そしてこのアニメ版といったメディアミックスプロジェクトだ。だが、アニメ版が放送開始となった1月の時点ですでにゲームはもうサービスが終わっていた。マンガも連載終了直前だった。 メディアミックスだったはずなのに、アニメ版が始まるときには撤退が始まっていたかのような感じだ。
おかげで、アニメ放送数週目にして突如話題に火が付き、ニコニコ動画での第1話配信が100万再生を突破。視聴者が「たーのしー!」と爆発し始めたとき、手を伸ばせるサブプロダクツがネットリリースの開始された主題歌しか無い状態だった。メディアミックスプロジェクトとしてはちょっと異例。いや、異常な事態とも思える。 (ちなみに、星野源がラジオでこの主題歌『ようこそジャパリパークへ』を「1日60回聞いている」と発言するなど、騒動は飛び火しているようだ)
素人考えでは「今こそゲームを再開すべきでは?」と思ったが、ソーシャルゲームを運営し維持するのは簡単なことではないようで、再開予定は無いことが早々に発表。 それくらいアニメ放送への反響は特殊だった。もしかすると『けものフレンズ』はソーシャルゲームを主力にしたメディアミックス展開の問題点や弱点が、ものすごく変な形で現れてしまった例であるのかもしれない。 反応はとてつもないことになっている。だが、「ヒット」というものを収益の大きさで考えるのなら、現時点ではコンテンツビジネスとして本当にヒット作品となるのかどうかもわからない感じだ。