Jan 21, 2018 column

2018年も映画、テレビで輝き続ける松坂桃李。エンタメ界で愛されるその理由とは?

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クズ男なのにウットリさせられる?!『かの鳥』を筆頭に、魅力と演技力が炸裂した2017年

 

『キセキ ーあの日のソビトー』(ブルーレイ&DVD 発売中) ©2017「キセキ ーあの日のソビトー」製作委員会

 

彼の躍進は2017年に入っても続き、今度は苦手なことを克服してまでチャレンジした役がある。「歌う仕事だけはNGにしてきた」と話す松坂が、プロデューサーの役だとマネージャーから聞いてオファーを受けたという『キセキ ーあの日のソビトー』だ。彼はGReeeeNのプロデューサー・JINを演じたが、結果的には劇中でデスボイスを駆使して歌うという苦手な芝居に挑戦したのだ。ビジュアルも髪を緑色に染めて髭を生やしたワイルドな風貌で、今まであまり見せたことのない姿が印象的だった。

 

『ユリゴコロ』(2017年公開)©沼田まほかる/双葉社 ©2017「ユリゴコロ」製作委員会

 

次に公開された『ユリゴコロ』では、父親の部屋から殺人者の手記を発見したことから運命が狂わされていく青年・亮介を演じた松坂。この作品は殺人者の人生が描かれる過去パートと、松坂が出演する現代パートの両方が交互に語られていくのだが、松坂は、最初はオシャレなカフェのマスターという風貌で、人当たりも良く爽やかな青年として登場する。ところが物語が進むにつれ、己の中に眠っていた凶暴性が暴れ出し、次第に自分の運命に苦悩していく亮介の変化を、松坂は芝居を楽しむかのようにしっかりと表現していた。

 

『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年公開)©2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

 

そして、彼の普段のイメージとはほど遠いクズな男を演じた『彼女がその名を知らない鳥たち』では、甘いマスクと優しそうな表情を逆手に取り、観客すら騙されてしまうような見事なクズっぷりを見せてくれた。妻子がいながら蒼井優演じるクレーマーの女性・十和子と不倫する百貨店の店員・水島を演じた松坂は、十和子との行為の最中に「“あ~”って声を出して」と囁き、独特な色気で相手を虜にしてしまうのだ。このシーンも一歩間違えば観客がドン引きしてしまう危険性があるが、あの甘いマスクと心地良い声で言われると、不思議と十和子のようにウットリしてしまう。どこか憎めないクズ男というのもまた、彼にとって新鮮な役柄だったに違いない。

さらに朝の連続テレビ小説「わろてんか」では、葵わかな演じるヒロイン・てんの旦那・藤吉を演じている松坂。売れない芸人を続けつつも、てんには売れている芸人と嘘の手紙を送ったり、てんを駆け落ち状態で大阪まで連れてきたはいいものの母親に認められずてんに苦労をさせたりと、好青年なのにどこか頼りない残念なキャラクターとして描かれているのも面白い。現在は寄席の小屋主として立派に成長した藤吉が、ラストに向けてどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。