Jul 30, 2022 column

もはや選択肢はなく、前に進むしかない黙示録以後の世界を描く シリーズ最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

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向こう見ずなヒロイン

ジュラシック・パークが開園した頃、恐竜はメスしかいなかった。このエピソードに象徴されるように、ジュラシック・シリーズにおける向こう見ずなヒロインの系譜はスピルバーグをはじめとした映画作家たちの意図的なイメージだろう。シリーズが始まった当初から進歩的な女性博士を演じていたローラ・ダーンは、ようやく時代の風潮が追い付いてきたことを喜んでいる。エリー博士は当初から自立した科学者であり、フェミニストだったのだ。『ジュラシック・パーク』で、恐竜の排泄物の山を自ら進んで漁るエリー博士の姿。彼女はどんな男性たちよりも勇敢で向こう見ずなヒロインだった。

もはや選択肢はなく、前に進むしかない黙示録以後の世界を描く シリーズ最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

『ジュラシック・パークⅢ』で行方不明になった息子を探すアマンダ(ティア・レオーニ)もまた、この系譜に連なっている。島に上陸するや、真っ先に息子の名前を拡声器で叫ぶ姿は、恐竜を呼び込む行為としてアラン博士に注意されてしまう。そして『ジュラシック・ワールド』シリーズのクレアは、最も分かりやすい新時代のヒロインだろう。彼女が白いジャケットを脱ぎ、腕を捲くりあげた瞬間から、その固い決意は揺るがないままだ。

『新たなる支配者』でクレアとエリー博士、そして裏社会でパイロットとして暗躍しているケイラ(ディワンダ・ワイズ)の3人の女性が並ぶ図には大きな意義がある。後続世代の勇敢なヒロインと並ぶことによって、エリー博士という人物が何者だったのか?ということが思わぬ形であぶり出されている。

同時にこの図は、ローラ・ダーンという俳優のキャリアの歩み方にもスポットライトを当てている。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』(19)のグレタ・ガーウィグと仕事をすることが大好きだと語るダーンのキャリアが、初めから一貫していたことに改めて気付かされる。そしてこのヒロイン像の系譜の最後に連なるのがオーウェンとクレアによって保護されたクローンの孤児、14歳の少女メイジー(イザベラ・サーモン)だ。

「メイジーはクレアを母親代わりにして成長してきた。クレアはメイジーに、強く、激しく、自立した女性とはどういうものかを教えてくれたの」ー イザベラ・サーモン (出典:『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』プレス資料)

もはや選択肢はなく、前に進むしかない黙示録以後の世界を描く シリーズ最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

共存は可能なのか?

『炎の王国』で溶岩の迫る島に取り残されたブラキオサウルスのショットは、オーウェンとクレアの瞳にいつまでも焼き付いていることだろう。炎と煙に包まれていくブラキオサウルスのシルエットを前に、オーウェンは何もすることができなかった。4年前に世界に解き放たれてしまった恐竜たちとの生活は、メイジーを保護したオーウェンとクレアの共同生活、彼らの近くに棲息する大人になったヴェロキラプトルのブルーと、その子供ベータの共存生活として物語を始める。

理解し合える者たちが隔離された場所で人生を過ごすユートピアのように見えるが、それぞれの関係にはいまもって軋みが露呈している。『新たなる支配者』は、それぞれがバラバラなルーツを持った人間の共存と、人類と恐竜の共存を等価に並べて実験する映画でもある。旧シリーズの3人は、この壮大な実験のために呼ばれたともいえる。

シリーズ最終作にあたる『新たなる支配者』は、これまでのシリーズが黙示録として警告していた世界からもう一歩踏み出している。この世界は既に取り返しのつかない世界になっていて、この問題と向き合って生きていく以外に選択肢はない。それはトレボロウの言うように、私たちの住んでいる世界や、近い未来に起こり得るかもしれない問題とよく似ている。

スーパーヒーローのようにすべてを解決することはオーウェンやクレアにもできない。悪徳企業に誘拐されたベータの救出に成功した3人はブルーと対面する。ブルーと別れる際のオーウェンの瞳には、かつて炎に包まれるブラキオサウルスに何もすることができず立ち尽くしていた、あのときの瞳がシンクロしている。オーウェンとクレア、そしてメイジーは目の前にいる相手への恐怖を敬意に変えること。そしてかつてのトラウマを悼み続けることで、黙示録以後の世界に生きることを決めたのだ。

もはや選択肢はなく、前に進むしかない黙示録以後の世界を描く シリーズ最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

文 / 宮代大嗣

作品情報
もはや選択肢はなく、前に進むしかない黙示録以後の世界を描く シリーズ最終作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

『ジュラシック・パーク』シリーズの第6作目であり、『ジュラシック・ワールド』3部作の最終章にあたる。

監督:コリン・トレヴォロウ

出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール、ディワンダ・ワイズ、マムドゥ・アチー、BD・ウォン、オマール・シー、イザベラ・サーモン、キャンベル・スコット、ジャスティス・スミス、スコット・ヘイズ、ディーチェン・ラックマン、ダニエラ・ピネダ

吹替版声優:玉木宏、木村佳乃 ほか

配給:東宝東和

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公式サイト jurassicworld.jp