Jul 26, 2023 column

第34回:核兵器への脅威と疑問を投げかける ! クリストファー・ノーラン監督 最新作『オッペンハイマー』

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全米19ヶ所しかないIMAX 70mm劇場で鑑賞する映画のエピックな映像とサウンド

ノーラン監督は、ホームスクリーンでは体験できない映画鑑賞の醍醐味を味わってほしいと、アソシエイト・プレスでコメントしている。

同じIMAXの映画館といっても70mmで鑑賞できる映画館は世界中に30ヶ所、ロサンゼルスで2劇場のみ。そのうちの一つ、ユニバーサルスタジオの隣、ユニバーサル・シティの映画館で、私もIMAX 70mm試写を体験した。映像の美しさはもちろん、体を揺さぶる迫力のある音楽効果には涙するほど、ある意味、ノーラン監督ならではの原爆の悲惨さを訴えた臨場感が体験できる。

ローリング・ストーン誌によると、ノーラン監督が若手作曲家ルードウィッグ・ゴランソンに伝えた希望は、バイオリンの旋律をオッペンハイマーの鼓動とし、スコアのモチーフにすることでオッペンハイマーというインテリで張り詰めた科学者の感情の起伏を表せられるのではとアイディアを伝えたという。

作曲家ルードウィッグ・ゴランソンの名前を知らない人でも、「ディス・イズ・アメリカ」で俳優・シンガーのドナルド・グローヴァー(シンガー名チャイルディッシュ・ガンビーノ)とともにグラミー賞を受賞した作曲家といえば納得する人も多いはず。スター・ウォーズのスピンオフ・TVシリーズ「マンダロリアン」の音楽を手がけたほか、『ブラック・パンサー』のスコア作曲でグラミー賞を受賞。ノーラン監督とはSFサスペンス映画『TENET テネット』以来、この作品が2度目のコラボレーションとなる。

ゴランソンは、最初はどこから手をつけていいかわからなかったものの、ノーラン監督から見せられた映像からアイディアが湧き出し、オッペンハイマーの頭の中で原子(アトム)が回転して磁力が発生するという映像からヒントを得て、40人のバイオリニストに一斉に演奏させ、息を飲むようなメロディーを完成。コントロールが効かなくなったような熱狂に包まれていくように、主人公の情熱が科学の可能性に融合されていく。一方で、物語の主軸となっていく公聴会という名の魔女裁判の様子は戦闘音楽のように圧迫感がみなぎるなど、映画としての醍醐味が溢れている。日本での上映はまだ決まっていないようだが、IMAX対応の映画館で体感して欲しい作品である。

文 / 宮国訪香子

作品情報
映画『Oppenheimer (原題) 』

ユダヤ系アメリカ人物理学者ロバート・オッペンハイマーが、第ニ次世界大戦中、核兵器開発チームをリードし「原爆の父」となった経緯と、その約10年後にマッカーシズムの赤狩りで転落していく様子を描く。原作は『オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』。

監督・脚本:クリストファー・ノーラン

出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr. 、フローレンス・ピュー

© Universal Pictures. All Rights Reserved.

日本での公開日未定 (米国:2023年7月21日公開)

公式サイト oppenheimermovie.com

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。