Mar 28, 2024 column

奴らがNYに帰ってきた!! 笑って泣けるファミリードラマ『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

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『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』が3月29日に日本公開される。全米では3月22日~25日の初週末3日間の興行収入が4520万ドル (約68.3億円) を記録し、初登場1位の大ヒットスタートとなった。これは、前作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021)の初週末興行収入4400万ドルを上回る数字となり、前作の最終全米興行収入約1.3億ドル超えが大いに期待できる数字だ。

今作がなぜ話題を呼んでいるのか。80年代からの系譜、偉大なるフランチャイズをどう引き継いだのか、ポップカルチャーとしての『ゴーストバスターズ』を解説する。

最強のNY旅行ガイド

シリーズ第一弾『ゴーストバスターズ』(1984)は、最高のポップコーン・ムービーだった。

コメディ映画の名手アイヴァン・ライトマンの、ゴキゲンな演出ぶり。ビル・マーレイやダン・エイクロイドら、人気コメディアンたちによる丁々発止のやりとり。映画史に燦然と輝く名作とは言えないかもしれないが、バカ売れしたレイ・パーカー・ジュニアの主題歌といい、テレビアニメやゲームなどのメディアミックス展開といい、今やアメリカを代表するポップカルチャーとして位置付けられている。

だが筆者が思うに、その主役はゴーストバスターズの面々‥‥ピーター(ビル・マーレイ)、レイ(ダン・エイクロイド)、イゴン(ハロルド・ライミス)、ウィンストン(アーニー・ハドソン)ではない。多種多様でキモカワなゴーストたちでもない。それはニューヨークという都市そのものだ。

古今東西の映画において、このビッグ・シティは常に災厄に見舞われてきた。『キング・コング』(1933)では、髑髏島の巨神がエンパイア・ステート・ビルに登って咆哮をあげた。『GODZILLA ゴジラ』(1998)では、巨大不明生物が街を蹂躙した。『アベンジャーズ』(2012)では、スーパーヒーローたちが結集して最終決戦に挑んだ。

どんな世界的クライシスが起きようとも、人類は必ず勝利し、未来に向かって進んでいく。その象徴として、ニューヨーク以上にふさわしい都市はない。『ゴーストバスターズ』、そしてその続編となる『ゴーストバスターズ2』(1989)もまた、その系譜に連なる作品だ。だからこそ、マシュマロマンを倒した直後にウィンストンは「I Love This Town!(ニューヨーク万歳!)」と叫ぶ。ニューヨークを救うことは、世界を救うことと同義なのだから。

ニューヨーク公共図書館、コロンビア大学、リンカーンセンター、ワシントン・スクエア・パーク、国立アメリカ・インディアン博物館。このシリーズには、ニューヨークの観光スポットが数多く登場する。『ゴーストバスターズ2』では、悪の力に対抗するために、自由の女神を動かすという奇想天外なシーンも登場した。これぞ最強のNY旅行ガイド。地球の歩き方NY編。いかにも80年代といえる狂騒的なノリで、ビッグ・アップルの魅力があまねく描かれる。 だが、実質的な『ゴーストバスターズ3』といえる『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021)は、その舞台をニューヨークからオクラホマ州サマーヴィルという中西部の田舎町に移し替えた。世界の中心から、世界の片隅へ。アイヴァン・ライトマンからメガホンを受け継いだのは、実の息子であるジェイソン・ライトマン。過去2回アカデミー監督賞にノミネートされた実績を持つ、実力派フィルムメーカーだ。父が築いた偉大なフランチャイズを、子が受け継いだのである。