Mar 28, 2024 column

奴らがNYに帰ってきた!! 笑って泣けるファミリードラマ『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

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父から子に継承された遺産

アイヴァンとジェイソンの作風はだいぶ異なる。アーノルド・シュワルツェネッガーとダニー・デヴィートが似ても似つかぬ双子という設定の『ツインズ』(1988)や、脳卒中で倒れた大統領の代わりに、外見がそっくりなだけの平凡な男性が影武者を務めるハメになる『デーヴ』(1993)など、アイヴァン・ライトマンは一貫してスクリューボール・コメディを手がけてきた。

一方ジェイソン・ライトマンが描いてきたのは、予期せぬ妊娠をしてしまった16歳の少女の姿を優しく見つめた『JUNO/ジュノ』(2007)や、家族と疎遠だった中年男性が次第に人生を顧みるようになる『マイレージ、マイライフ』(2009)など、ちょっぴりほろ苦くてちょっぴり切ないヒューマン・ドラマ。

かつてジェイソン・ライトマンは、もし自分が『ゴーストバスターズ』を手がけることになったら?という問いに対して、「史上最も退屈な『ゴーストバスターズ』映画になるだろうね」と答えている。おそらく半分はジョークで、もう半分は本気だったのだろう。都会派コメディとして作られた『ゴーストバスターズ』シリーズには、ジェイソンがテーマとして追い求めてきた”家族”というモチーフがまったく感じられない。自分の作風とは、あまりにも乖離があることを分かっていたのだろう。

父は息子に、『ゴーストバスターズ』というファミリー・ビジネスを引き継ぐように口酸っぱく言い続けていたという。ジェイソンは、そのオファーをやんわりと断り続けてきた。だが最終的に彼は、『アフターライフ』を自ら演出することを決心する。しかも、プロデューサーを務める父親と二人三脚で。

その舞台となるのは、これまでの大都会ニューヨークではなく、『JUNO/ジュノ』や『ヤング≒アダルト』(2011)でも描かれてきた中西部の田舎町。イゴンの孫娘フィービー(マッケナ・グレイス)、その兄トレヴァー(フィン・ウルフハード)を中心に、ティーンエイジャーのジュブナイルが描かれる。偉大なフランチャイズを自らのフィールドへと引き込み、『ゴーストバスターズ』を家族の物語に再構築することで、まごうことなきジェイソン・ライトマンのフィルムに仕上げたのである。

「私の人生で素晴らしい瞬間になったのは、父親と一緒に観客の『ゴーストバスターズ/アフターライフ』を製作し、セットで父の隣に座り、父と一緒に最初の上映会に行き、世界中を周り、父と一緒に観客の前に立って『皆さん、彼がアイヴァン・ライトマンです』と紹介できたことです」と、ジェイソン・ライトマンは語っている。家族の物語『アフターライフ』は、まさしく家族によって作られたのだ。

だが、『ゴーストバスターズ』の真の主役はニューヨークという街そのもの。だからこそ、『アフターライフ』のラストではマンハッタンの夜景がインサートされていたのだろう。その予告どおり、最新作『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』は、再び世界最大のビッグ・シティが舞台となっている。あの懐かしい元消防署の本部を住まいにして。