Feb 04, 2023 column

『FALL/フォール』新ジャンル"超高所レジャー系"恐怖映画の楽しみ方

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不真面目くらいがちょうどいい

さんざん高所の映像怖いよ!と煽っておきながら恐縮だが、この映画を真剣に観すぎてはいけない。なぜなら、ところどころにB級映画感は拭えないからだ。肩の力を抜いて観るくらいがちょうどいい。

そもそも主人公ベッキーは、なぜテレビ塔に登ったかというと、山でフリークライミング中に落下事故で亡くした夫への気持ちに区切りをつけるべく、頂上で遺灰を巻くためだ。

その計画を提案し誘ったのは、親友のハンター。彼女は、SNSフォローワー6万人の冒険チャレンジ系YouTuberで動画の広告収入で旅をしている。要はバズるために「壊れかけの鉄塔600m 命綱1本で登ってみた!」といった撮影をしたいのだ。しかし彼女は登るまでの過程を全く撮影をせず、登頂成功してドローン飛ばして自撮りするだけ。

思い入れのない土地での散骨、傷心の親友を誘っての動画撮影に加え、あのスマホのバッテリー容量はどれくらいだろうか? 圏外エリアでドローンアプリをどうやってダウンロードしたのか? このようにたびたび登場する本筋とは違う細かいミステリーが眼前に迫る恐怖を和らげてくれる。

テレビ塔へ向かう途中、死にかけの動物を喰らっているカリフォルニアコンドル(本編字幕ではハゲワシ)と遭遇する。「まだ生きてるのにかわいそう」と追い払うが、動物の死体を写真に取りSNSにアップし、いいね!がついたことに喜ぶ。実は恐怖の前振りになっている。

ちなみにカリフォルニアコンドルは、全長110〜140センチ程度、翼をひろげると2メートルを超える大きさで結構大きい。頭がハゲているのは腐敗した死骸を漁るときに、羽毛に有害な細菌をなるべく付着させないためだ。彼らは、極めて頑強な消化器官があるので、危険な細菌を死滅させることができる。人間が食べたらひとたまりもない。
この死の鳥が登場したあたりから、ホラーらしくなっていく。

ホラー要素といえば、主人公の2人。ベッキー役のグレイス・フルトン、ハンター役のバージニア・ガードナーは、ブルネットとブロンドの豊満ボディのセクシー美女と、ホラーのお約束どおりのキャスティングなところがいい。

ホラーに必須のセクシー要素だが、鉄塔に登るという設定上、水着や下着になることはあまりに不自然。

しかしハンターはYouTuber。バズるために胸元を開けて谷間を露出しデニムの短パンでクライミングする。ベッキーは、カットソーとレギンススタイルで露出は少ないが、後半ハンターの胸元を見慣れたころに服を脱ぎタンクトップ姿になる。他はツッコミどころ満載なのに、肌の露出の理由づけが、違和感なく自然なところは製作者のB級映画愛を感じる。
この映画はいわゆるサメ映画と一緒。ちょっとエッチで荒唐無稽だけど楽しめるエンタメ作品なのだ。