May 13, 2026 column

単なるドキュメンタリーでもコンサート映画でもない “没入型ライブ映画” 『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』

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プライべート・コレクターから提供

監督のバズ・ラーマンによれば、伝記映画のリサーチ中に多くのアーカイブ映像に出会った。ラーマンはこう説明した。「その中でもいわゆる『プライベートなコレクター (収集家)』と呼ばれる人たちは、『ただ、そのものを持っているだけでいい』という人たちなんだ。別にそれを貸し出してお金をもらおうなんて思ってない。だから、僕たちは辛抱強く何度もその人物の元に行き、信頼を得て、最後にやっとの思いで僕たちが必要とするものを手に入れたんだ」と振り返る。

いくつかのアーカイブ・フィルムには動く絵はあったものの、「音声」がはいってないものもあった、という。どうすればいいのか途方にくれたこともあった。探偵を使って、たった何秒かの音源を持っている人物を探し出したりもしたそうだ。

そうしたアーカイブの中でも、エルヴィス本人が語っている3-40分の映像を見つけたときには、今回のこの『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』の骨格が固まったという。映画冒頭で「僕自身の語り口でストーリーを話そう」という声が紹介され、まさにこの没入型ライブ映画であり、同じくドキュメンタリー映画にも通じる作品のコンセプトが明らかにされた。だが、ラーマンはこれを「ドキュメンタリー映画でもなければ、コンサート映画でもない」とも言う。

また発掘されたアーカイブ・フィルムには傷みの激しいものがあり、その修復再生には最大の注意が払われた。だが、ラーマンによれば、「今回の映画には、一切AIでの修復などは使っていない」と声を大にして語っている。すべてがその時代時代の息吹と空気感を捉えた映像ということだ。

「物故者セレブランキング」

アメリカの経済誌「フォーブス」が2001年から掲載を始めた「物故者 (デッド・セレブ) 年収ランキング」で発表初年から1位を2006年をのぞいて2008年まで独走していたエルヴィス・プレスリー。現在もトップ10内に毎年ランキングされている。このランキングの常連が2009年に亡くなったマイケル・ジャクソンだ。マイケルもエルヴィス後多くの年で1位を獲得している。「キング・オブ・ロックンロール」と「キング・オブ・ポップ」は、「デッド・セレブ」の中でも群を抜いて安定して人気がある。そして、マイケルは一時期エルヴィスの愛娘リサ・マリーとも結婚していた。すぐにふたりは離婚してしまったが、もしふたりの間に子供が生まれていたら、一体どんなDNAを引き継いでいたのだろうか。想像するだけでも楽しくなる。

エルヴィスやマイケルのライブを見ることはもはやできないが、このようなライブ映画が公開されることで、まさにライブを疑似体験できることは素晴らしいとしかいいようがない。ご覧になるときは、音響が特にいいIMAXなどでの視聴をお勧めする。2022年の前作、伝記映画『エルヴィス』とそれから4年を経て公開された2026年の『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』は、まさにアナログ・レコードのA面とB面の役割を持つ作品たちだ。

文 / 吉岡正晴 (音楽ジャーナリスト/DJ)

作品情報
映画『EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』

名匠バズ・ラーマン監督が、1970年代初頭のラスベガス・コンサート及び全米ツアーの象徴的なライヴ・パフォーマンスを中心に、リハーサル、記者会見などの貴重な映像を最先端のレストア/リマスター技術を駆使しながら、2年以上の歳月を費やして復元。同一の楽曲を複数の異なる演奏シーンでシームレスに編集、リップシンクの細部にもこだわって再構築した“キングの壮大なる(EPiC)現代への帰還”。

製作・監督:バズ・ラーマン

出演:エルヴィス・プレスリー

配給:パルコ ユニバーサル映画

©2025 SONY MUSIC ENTERTAINMENT.ALL RIGHTS RESERVED.

2026年5月15日(金) IMAX先行上映
2026年5月22日(金) 2D(通常版)全国公開

公式サイト:micro/epic