Dec 16, 2022 column

映画『Dr.コトー診療所』公開記念 ヒューマン・ドラマの金字塔を振り返る

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ドラマスペシャル Dr.コトー診療所2004

映画『Dr.コトー診療所』で監督を、ドラマシリーズで演出を務めた中江功は、2003年は「コトーが島の人に受け入れられる」、2004年のスペシャルドラマは「身近な家族が病気になり別の形のつながりが島の人たちとできていく」、2006年は「一番近い存在が病気になって、より”家族”を想う」というテーマでつくってきたという。

大ヒットした2003年の翌年。2004年11月12日、13日と2夜連続放送された「Dr.コトー診療所2004」は、2話ながら「Dr.コトー」を知る上で重要な話である。

島に慣れてきたコトーを引き留めようと彩佳とくっつけようとする動きがあるなか、年に一度開かれる豊漁祭の季節が訪れる。
祭当日、星野正一の妻で、彩佳の母である星野昌代(朝加真由美)が脳内出血で倒れてしまう。
正一は酔っ払って寝入ってしまい、彩佳は診療所の仕事に追われ、発見が遅れる。コトーが緊急手術を行うも、右半身の麻痺が残り、言葉も不自由となる。

いろんな患者に接し「家族の苦しさ、分かってるつもりだったけど‥‥」と、苦しみを吐露する彩佳。酔っ払って気づかなかった正一は、己を責めつづけるなかリハビリを手伝うが、昌代の「死にたい」の文字に涙する。
後遺症に苦しみ、そして悩み苦しむ家族を感じる昌代に、コトーは自身が好きだという卵焼きをまた作ってほしいと励ましの言葉を送る。

このドラマスペシャルでは星野家だけでなく、原親子にも転機が訪れる。
コトーに命を救われて以来、医者に憧れる小学生の剛洋は、勉強に励んでいる。その姿を見ていた父・剛利は、息子の夢のため、東京での医学部進学への資金として自らの漁船を売り、漁師を辞める決意をする。島を離れる剛洋は、見送りに来ない父へ、泥のついた180円のタオルを贈る。

ふたつの家族に訪れた人生の転機。それによって家族が想い合う姿が涙を誘うドラマスペシャル。これは2006年シリーズへつながり、映画版をより深く理解するために重要な物語でもある。