Sep 30, 2017 column

20%を超えない時期も内容に自信があった。制作統括が語る視聴者と作り手との繋がり。

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第4回 『ひよっこ』制作統括 菓子浩プロデューサーに聞く【後編】

 

朝ドラこと、連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年4〜9月)は、高度成長期、お父さんの突然の失踪によって、茨城から東京に働きに出てきた女の子みね子(有村架純)が、たくさんに人たちとふれあい、次第に成長していく物語。
失踪したお父さん(沢村一樹)が記憶喪失で、助けてくれた女優(菅野美穂)と2年半も一緒に暮らしていたという、残された家族にとってはヘヴィなエピソードがあるとはいえ、概ね、ささやかな日常を丁寧に紡がれる、アンチクライマックス的な世界。そこに生きる人々は、ひとりも突出した何かをもった人はいない。主人公は、大きな夢や目標もなく、日々を生きることにせいいっぱい。「泣くのはいやだ、笑っちゃおう」精神で、悲しいことがあっても、笑いによってプラスに転じる生き方をしていて、悪人のいない、いさかいのない、善意に満ちた優しくあたたかい物語が愛されて、視聴率は後半にいくに従って、上がっていった。
なぜ、『ひよっこ』はこんなにも優しい世界になったのか。制作裏話を、菓子浩プロデューサーに伺いました。

 

スケジューリングもプロデューサーの仕事

 

──朝ドラにはプロデューサーの個性が出て来るものでしょうか。

やっぱり作家さんの個性じゃないですかね。

──『あまちゃん』(13年)で菓子さんも制作統括のおひとりでしたが、中心になっていた訓覇圭さんと菓子さんはどういった役割分担だったのでしょうか。

『あまちゃん』は、完全に宮藤官九郎さん、訓覇プロデューサー、井上ディレクターが立ち上げた企画です。プロデューサーの仕事にもいろいろあって、企画立案、キャスティング、脚本作りという仕事もあれば、収録を現実化していく仕事があります。オンエアに間に合うように、収録のプランを立てて、現場で起こるトラブルを処理しつつ、予算を管理して……というような仕事です。品質管理も大事で、試写ひとつとっても、朝ドラの場合、少なくても、編集の段階で2回、MA(音付け)の段階で2回、完成したものを1回、と5回は試写をして、どんどんブラッシュアップしていきます。
『あまちゃん』では、訓覇さんが脚本やキャスティングを主に見て、僕が収録や予算の管理と広報をやっていた感じでしょうか。乱暴に言うと、僕の仕事はなるべく訓覇さんが自由に動けるようにすることだったと思います(笑)。実は、初任地が京都局なのですが、そこで訓覇さんが先輩でした。『あまちゃん』も、訓覇さんに呼ばれて手伝うことになったんです。

──菓子さんが実務的なところをしっかりおやりになったおかげで、訓覇さんが宮藤さんと物語を徹底的に突き詰めていって、我々は『あまちゃん』を楽しませて頂けたんですね。きっと『ひよっこ』も菓子さんの優れた調整力が生きたドラマではなかったかと思います。『ひよっこ』では、後半、ふたり演出家体制の週がありますが、そこはどういう分担ですか?

一番多いパターンは、NHKの演出家は、朝ドラで演出デビューを果たすことが多くて、その場合、ベテランの演出家が後見につくんです。例えば、24週は、板垣麻衣子が大きなドラマは初演出で、金土2日分を担当し、田中正がそれを見ていました。23週の、松木健祐と堀内裕介に関しては、ふたりに、もう1週ずつくらい担当してほしかったのですが、足りなかったので、単純に半分ずつ担当してもらいました。

 

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──そういう担当を決めるのは菓子さんですか?

そうですね。台本を読んで、ここは誰がいいかなと考えます。それぞれ個性があるので、それを生かしてもらいつつ、あまり別のドラマにならないように色を合わせるように気をつけています。でも、みんな、この週はやりたいと言い出して揉めることもありますね(笑)。ただ、今回は、すごくチームワークがよくて、自分の担当週でなくても、劇中劇だけ別の者が担当するなど、お互い手伝い合っていました。

──撮影のスケジューリングも大変でしょうね。

例えば、時子(佐久間由衣)のコンテストのリハーサルで、男女が分かれているのは、あれだけのキャストが全員揃う日がなかったための苦肉の策です。でも、そういう事情に見えないように、理由づけを岡田さんが脚本で考えてくれるわけです。それでも、女性陣が全員揃ったのは1時間くらいしかなくて、あとは、よく見るとわかりますが、微妙に何人かの場面に分けているんですよ。

──田植えの日も、1日しか撮影日がない中、雨が降ってしまったんだなあ、きっと撮影は大変だったろうと思って観ていました。

天候はしょうがないですよね……。すごく天候が変わりやすい時期で、最終週のロケも、天候がどんどん変わって大変でした。