愛されるキャラクターの日常を描く朝ドラ
──お互い譲歩しながら、丸く収めていくという平和主義な世界は、そういうところから出来上がったのでしょうか。
元々、岡田さんが描く世界は優しい世界で、悪人が出てきません。実を襲った人すら、きっとなにか事情があるのだろうと思えてきます。どういうタイプの朝ドラがあってもいいと思いますが、『ひよっこ』のような朝ドラは、理想的だなと僕は思っています。朝、観ていただく時に、どんなに辛いことがあっても悲しいことがあっても、ベースは優しい世界を観ていただくほうが良いような気がするんですね。大きな物語のうねりを、事件を起こすことで作っていくというドラマの作り方もあると思いますし、『ひよっこ』にもお父さんの失踪という大きな出来事があります。だけど、基本的には日常を淡々と丁寧に描いていくドラマです。156回、月から土まで毎日放送するという特殊な形態のドラマの場合、ストーリーの起伏で見せていくよりも、それぞれのキャラターを愛してもらって、明日もあの人たちに会いたいと思ってもらう作り方のほうが、馴染みがいいのではないでしょうか。でも、それには相当な力量が必要で、岡田さんだったから成立したと思います。
──『とと姉ちゃん』(16年)も、大きな話を軸にというよりも、キャラクターを愛してもらう路線だった印象です。朝ドラには、“女の一代記路線”のほか、キャラクターの日常路線があるのでしょうか。
実際のところ、朝ドラという枠を、俯瞰して考えている人はそんなにいなくて、各作品の担当者がそれぞれ、その一作を一生懸命考えているだけです。本当なら、シリーズ俯瞰して戦略を立てる人がいると、またひとつ新たなステップが生まれるかもしれないですが(笑)。
──朝ドラ部長みたいな人がいればいいですね(笑)
今のところ、そういう人はいないので。次回『わろてんか』は、モチーフの人物のいる、女の一代記の面白さがあるでしょうし、『半分、青い。』(18年)はまたオリジナル。いろいろなタイプの朝ドラがあっていいと思います。
撮影 / 田里弐裸衣
菓子浩(Hiroshi Kashi)
1968年、富山県生まれ。朝ドラ『ちりとてちん』の演出などを経て、2009年よりプロデューサーに。朝ドラでは『ウェルかめ』『あまちゃん』『ひよっこ』。他に、『金魚倶楽部』、『それからの海』、『はつ恋』、『ヒカルの掃除』、『さよなら私』。
影響を受けたドラマは、唐十郎作、三枝健起演出『安寿子の靴』、『匂いガラス』など。
連続テレビ小説『ひよっこ』
連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
脚本:岡田惠和 出演:有村架純ほか 全156回
最終回は、9月30日(土)