Apr 30, 2018 column

『半分、青い。』制作統括・勝田夏子ロングインタビュー(前編) 脚本家・北川悦吏子と作る家族の物語

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──最初に会った北川さんはどんな感じでした?

朗らかでフランクな方でした。ただ、やり取りしていると、まったく常人と発想法が違っていて、驚くことがたくさんあります。集中力が尋常じゃないし、ご自分が書いているのではなく、まるで神様に書かされているみたいな感じになる。一気に集中して書くと、書いたことを忘れて、あとでご自分で書いたものを読んでびっくりされたりして(笑)。そういう方はなかなかいないです。

──これは神がかってる! と勝田さんが読んで思ったシーンはどこですか。

例えば、2週目でヒロインが片耳を失聴するあたりの描き方は本当に凄いと思いました。おそらく、ご自身も片耳を失聴されていたり、病を抱えられていたりするからでしょうけれど、描き方が、型にはまらず、深く、なおかつ、深刻になり過ぎない。ものすごくシビアな側面と、でも人間って落ちるところまで落ちたら、必ず立ち上がるよねという希望を失わない力強さが、圧倒的でした。

──登場人物が絶望から立ち上がることは、朝ドラに連綿とあるものですね。

そう思います。今回、“新しい朝ドラ”という部分が話題の中心になっているため、『どういう新しさがありますか』とよく聞かれますが、もちろん、新しい面もありながら、意外に朝ドラらしいというか、むしろ王道と言ってもいい面もあると思っています。

──普遍的な部分と新しい部分の両方があるところがいいですね。

北川さんにとっての新しさとしては、“ホームドラマ”です。はじめての挑戦ということで、家族をすごくしっかり描いてくださっています。北川さんの描く家族はこんなにすてきなんだということは、発見でした。

──そこには新しい家族像みたいなものが見えますか?

どちらかというと本当に朝ドラらしい家族だと思いますが、それが演じる俳優さんたちの演技とあいまって、すごくいい空気感になっています。

 

 

──“朝ドラらしい家族”というのはどういうものでしょうか。

ヒロインを家族みんなが支えていることですね。みんながヒロインのことを考えて、包容力を発揮する。鈴愛が失聴したとき、おじいちゃん(中村雅俊)とお父さん(滝藤賢一)のお布団に入るシーン(11話)が私は大好きで、ああいうシーンを見ると本当にいいなあと思いますね。

──まさに理想の家族ですよね。

今の世の中からするとそういう古き良き家族像というのは、ちょっとファンタジーになってしまうかもしれませんが、楡野家は、見ていて、ああ、こういう家族がいたらいいなあと、ホッとするような家族だと思います。

──“ラブストーリーの神様”という謳い方もされていますが、北川さんの描く家族も注目ですね。

家族の描写や、コメディなど、北川さんの引きだしの多さを感じていただけると思います。

──コメディといえば、現場を見学させていただいたとき撮影していた第6週で、萩尾夫妻(谷原章介、原田知世)と楡野夫妻(滝藤賢一、松雪泰子)が集まって語るシーンの、言葉のチョイスが面白かったです。

ああ、あれですね。変わったシーンでしょう(笑)。あれはやっぱり、北川さんじゃないと出てこない言葉だなと思います。北川さんの描くシーンは、一色ではなく、何色もあるイメージです。例えば、ご覧になったシーンは、ある出来事に対する謝罪のシーンですが、意外性のある言葉を挟むことで、ただ申し訳ない思いが伝わるだけでなく、不思議な味わいと奥行きのある場面になります。ほかにも、6話で夜、寝床で鈴愛と晴(松雪泰子)が語りあっているとき、傍らの布団の中で宇太郎が『俺に感謝はないのか』というモノローグなども、普通は入ってこないもので、面白いです。