1986年に行われた祭祀「チロンヌプカムイ イオマンテ」の全記録、ドキュメンタリー映画『チロンヌプカムイ イオマンテ』。本作は、チロンヌプカムイ(キタキツネ)の霊魂を神の国に送り返し、毛皮と肉を背負ってまた人間の国にやってきてほしいと願うアイヌ民族の重要な祭祀を映し出している。大正時代から75年ぶりに行われた祭りの貴重な記録映像を2Kレストアし、歌、踊り、言葉をよみがえらせた。まもなく最終回を迎える人気漫画『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者である中川裕が、アイヌの長老の入魂の祈りを全て書き起こし、現代日本語訳をつけた。
司祭の日川善次郎エカシによる「火の神への祈り」のシーンがおさめられた本編特別映像が公開された。
チロンヌプカムイの霊魂を確実に神の国に送り届けるため、火の神の助けを借りようと、囲炉裏の火に向かってカムイノミ(神への祈り)を行う。火の神は人間の生活の側にいる一番身近なカムイ。日川エカシは繰り返し繰り返し、言葉を唱えて願いを伝えようとする。言葉を間違えたり、手落ちがあれば、チロンヌプカムイが神の国に帰ることができずに大変なことになる。居合わせる者の真剣な表情が神事の重さをものがたる。
映像には、民族衣装に正装したアイヌたちがイクパスイ(献酒箸)で酒をすくって、火の神への供物・依り代であるイナウに捧げるようすなど伝統的なアイヌ文化が映し出される。日川エカシの祈りの言葉はアイヌ語だが、中川がそのすべてを翻訳したことで、チロンヌプカムイの旅立ちを見守るアイヌの長老の思いが初めて明らかになった。
ポレポレ東中野では、4月30日(土)より〈公開記念トーク〉が各回上映後に開催される。(最新情報は劇場HPにて)
ドキュメンタリー映画『チロンヌプカムイ イオマンテ』は、4月30日(土)よりポレポレ東中野ほか全国公開。
『ゴールデンカムイ』アイヌ語監修の中川裕が全訳・監修。幻の祭祀の全記録。1986年、北海道・屈斜路湖を望む美幌峠で、大正時代から75年ぶりに「チロンヌプカムイ イオマンテ(キタキツネの霊送り)」が行われた。アイヌの人たちもほとんどが知らない幻の祭祀。狩猟民であるアイヌの伝統的な考えでは、動物は自らの肉や毛皮をみやげにして人間の国へやってくる。アイヌは、キタキツネをわが子のように可愛がって育てると、やがてイオマンテを行う。祈りを捧げ、歌や踊りで喜ばせ、みやげを背負わせて神の国へ送る。祭祀を司るのは、明治44生まれの日川善次郎エカシ(当時75歳)。祈りの言葉を間違えれば神の怒りをかう。一言一句に魂をこめる。1986年に撮影したものに2Kレストアを行い、歌、踊り、言葉を35年後によみがえらせた。
監督:北村皆雄
監修・カムイノミ対語訳:中川裕
配給:ヴィジュアルフォークロア
2022年4月30日(土) ポレポレ東中野ほか全国公開
公式サイト iomantefilm.com